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慶応SFC福田研究室訪問記

[ トナメ~ル 2004年6月21日号掲載 ]


今回は、慶応SFC環境情報学部福田忠彦教授の研究室を訪問した際の模様を、アルゴ21シニアコンサルタント戸並隆さんの発行するメルマガ「トナメ~ル」より、ご紹介します。

アクセシビリティのJIS規格制定

昨日6月20日、アクセシビリティのJIS規格が制定されました。どのようにすればウェブコンテンツが障害のある人や高齢者にとってアクセシブルになるのか?障害者や高齢者へのデザイン的な配慮に関しての規格です。JIS規格には法律のような強制力はないものの、官公庁や自治体にとっては強制に等しい影響力を持ち、今後、Webサイトなどのシステム構築案件の調達条件に含まれる可能性が高いと言われています。一般企業もCSR(企業の社会的責任)の声が高まる中、社会的弱者への優しい対応の有無が問われるのは必然であり、早急な対応が望まれます。

インターネットは20世紀後半の最大の発明だと思います。そのおかげで多くの企業は、(聴覚)障害者を採用し、彼(彼女)達は、ほぼ健常者と同じように働いています。又、今後の高齢者は出生率の問題とは無関係で急増します。工業化社会で言う労働人口は急速に収縮します。人の集積に必須な通勤や会社への忠誠心や長時間労働や効率的作業という工業化社会の前提条件は、高齢化により大きな影響を受けます。しかし、今後始まる知識社会は脳と経験とコミュケーションが、リソースです。それらは、高齢によりマイナスになる部分は小さいです。インターネットは、道路や水道のように、高齢者や障害者が社会参加して行くための社会基盤とも言えます。年金問題や労働人口減少問題の一つの解決手段は“バリアフリー”ではないでしょうか。

そんなことで、アクセシビリティの先端ベンチャーのアライド・ブレインズの方々と一緒に、慶応SFCに行ってきました。 環境情報学部福田忠彦教授の研究室です。応対して頂いたのは、福田教授とこの4月からミュンヘン工科大学から戻られたSFC一期生福田亮子専任講師(環境情報学部博士号第一号取得)と博士課程の青山さんです。

慶応SFC福田研究室

福田ゼミの写真には驚くほど多くのゼミ生が写っています。全部で100名を超えているそうです。何と!学部2年から(意欲があれば1年からも)ゼミ(卒論)をやるそうです。受身で先生の講義を一方的に聞くのではなく、ゼミで先輩と一緒にフィールドワークができると言うことです。素晴らしいことなんですが、受験勉強に慣れた頭を一斉に切り変えねばなりません。慶應大学SFCの理念の一つが自発的な「問題発見・解決」です。福田教授は、「授業は多少もたついた方がいい」と。「話は滑らかで面白いけれども、終わると何も残らないという講義はよくあるが、それよりも、もたつくことにより、学生に考えさせ、自分で調べさせることができる方が良い」とおしゃっています。自分で授業をデザインするということです。福田先生は元NHKなんですが、とても優しい雰囲気をお持ちです。魅力的な先生です。

必須は体育だけで、自分の研究テーマに必要な授業を選択するそうです。研究に必要だから選択します。授業に身が入るのは当たり前です。学問や技術は積み重ねが必要だという常識があり、面白くない一般教養、専門課程、研究と段階的に進むのが当たり前だと思っていました。研究と学習を同時にやる方が脳は活性化し働き気づきも多いようです。

学習は先達の知識の修得です。彼らの肩の上に立って、より遠くを見るとニュートンも言いました。でも、肩の上に立つだけで精一杯でふらついて、遠くを見るなんてとてもとてもだったら……..学習とクリエイテビティは相反する概念でもあります。ウオータフォール型からPDCAスパイラルアップ型といえそうです。“学びて思わざれば即ち暗し、思いて学ばざれば即ち危うし”とも言えますかね。

でも、自分の頭で自由な思考思索の訓練を受けた学生を、日本の大企業は採用し使えるんでしょうか?従来の大企業がそもそも本気でクリエイテビティを求めているとは思えない。今回の失われた10年を千載一遇のチャンスとして、人事給与制度を会社よりに変えただけではないでしょうか?若い優秀な人間は、米国のように、大企業には行かないことです。エクゼクテブサーチによると、日本の大企業は20年でアホになるそうですから。ある中堅企業の社長も同じことを言っていました。「大企業で優秀だったサラリ-マンは全く使えない」と。SFCは、キャンパスも広く緑が多く、風も爽やかで誰かがスタンフォード大のようと。思わず「そうそう!」と言ってしまいました。行ったこともないのに!

それはそれとして話はワクワクするような面白さ!

福田研究室の研究対象は「人間工学」です。特に、アイカメラの研究は日本の第一人者です。アイカメラはドライバーの眼球運動(視点がどのように移動するか)ってTVで良くやっています。でも、それでどんな研究ができるのだろうと思いませんか?これが凄いのです。眼は脳が剥き出しになっている部位と言います。目は口ほどにモノを言いとか口以上にモノを言うとか。外界の環境と脳と身体機能とは感覚器である眼を通してインターアクションをします。「脳の活動を外部から観測する」そのためのツールがアイカメラです。

視野には中心視と周辺視があります。中心視とは見ている中心で、狭い範囲で詳細な認識ができます。周辺視とは中心からの同心円です。座標の位置関係は中心視より優れていて、動きがわかります。この二つの機能が融合し眼の役割を担っています。自己の主観的評価と外からの多角的評価の融合。今後は、瞬き心拍数や発汗や呼吸にも広げていかれるようです。

具体的な研究事例がわかり易い。

(1)最初の頃の研究でATMの画面の良し悪し、画面の情報量と操作検索に要した時間の測定をされました。銀行によってバラツキ(1~2秒と12秒)この差は大きいです。最近の研究では、Web構築する技術進歩速度が速過ぎるため、機械のほうで何とかしてくれとの要求。コンビニCDのようにインタラクティブなマンマシンに関して、慣れている人と慣れていない人がいる。上級者は最短経路でやりたい、わからない時、ボタンを押すのではなく自動的にヘルプ。広義の意味での“戸惑いの検出”です。その検出ができるようになって来たそうです。

実は取材テープが壊れてしまって、ICレコーダーを研究室でお借りしました。宅配便でお返ししますと言ったら、ネットで送りますと。不安な状況でハ~ハイ。私は元SEでITコーディネータですが、全くのレガシー男です。COBOLなら今での高速プログラミングができると勝手に言っています。ZIPファイルをネットで受けてRealPlayerで再生するくらいはできるだろと。悪戦苦闘してもできません。ZIPは圧縮されているので解凍しなければも分かっていません。解凍ソフトをネットからダウンロードしインストールすることを教えてもらいました。その時、Read-Meが付いてきます。よしよしと読んでもサッパリです。そのフリーソフト開発者は非常に丁寧に書いてくれているのでしょう。でも利用者のリテラシーは無視です。彼の書いた、前提のPC知識が理解できないのです。

昔、受験参考書で“よくわかる….”シリーズがありました。これもわかりませんでした。この二つは全く別の理由なんです。「本格的な本物」と「わかった振りで単に問題が解ければ良い」これも相手に合わなければ全く役にたちません。“戸惑いの検出”はありがたい!その時思ったのですが、米国人は多人種で相対的な教育水準は日本より低いです。情報機器やPCやネットのマニュアルやコールセンターで自分の疑問の答を得ているんでしょうか?

(2)高齢者と若年者の差。歩いたりする時、周辺視機能の衰えにより、高齢者は目を頻繁に動かす。高齢度の測定です。また怪我をして回復の状況がわかるそうです。身体機能が落ちているため、視野の使い方が慎重になります。単に視野が狭くなったという物理的な現象ではなく、機能的視野とも言われ、ある機能を確保するための必要とされる使われる視野。高齢者の運転能力の測定も?

(3)剣道の達人は相手の目のあたりに焦点をあわせ、殆ど眼球運動をしないが、初心者はめまぐるしく動く。周辺視で変化や動きを全体視野の中で観察しています。相手の目を凝視し過ぎると、周辺視が働きづらくなり、全体の中の微小な変化を観察する能力が落ちます。

(4)アルツハイマーの患者は短期記憶の障害に現れます。絵をみて同じものを描くことが難しくなっていきます。忘れてしまうため、何度も眼が動きます。病気の進行状況が測定できます。

(5)オートバイのライダーと車のドライバーとは全く視野領域が違うそうです。ライダーは縦型の楕円、ドライバーは横型の楕円。ライダーは路面状況の観察に注意の多くが使われます。これは神奈川県警の交通教則本に採用されているようです。

(6)アイ&ハンド・コーデネーションとは、身体機能と眼と脳が密接に関係し協調することなんですが、優れた絵描きは、景色を見てペンで測定しながら同時に絵を見ないで描きます。PCを使うスキルの測定として、マウスと視線との研究です。マウスが全く動かないと手首も固まって速い動きはとれません。マウス先行か視線先行か?癖なのか?Web画面を十字で四つの領域に分け、どの領域が影響があり、注意が引かれるのかるのか?アクセスビリティの観点で言えば、その場所には余計なものは置かない、逆に広告なら課金に使えます。上級者には注視点がでなく、周辺視でスキャニングをしているようです。短い時間で画面情報の把握をする。ジート注視し細かく読むのではなく、ボーと全体を見る効果。

(7)速読は見開き2ページを3つくらいの注視点で読んでいるそうです。3秒ぐらいだそうですから、読むと言うよりスキャンする感じだそうです。文章は頭にスキャンしても理解はしていないようです。でも、後から内容を聞かれても答えると。その時、自分のメモリーから再度読み直しているのでしょう。練習2年でできると速読者は言っていたそうです。読むことは考えるための刺激ですから、理解し考えるスピードが速くならない限りは………….は私の負け惜しみ。只、斜め読みでキーワード検索のように何について述べているか大雑把に素早く掴む速読は、情報の捨取選択のためには効果的です。

(8)その他。
  船長と視野。見張りの時の目の動き。次に起こることを予測しているが、素人は今を見ている。素肌の美しさはどこを見るか?これは大手化粧品会社からの委託研究。大手飲料メーカからは、パッケージ、色、形、を、どのように消費者が感じているか?消費者の行動分析の委託研究も多いそうです。演奏家はどのように楽譜を読んでいるか?読みやすい電子時刻表とは?高齢者の自立した生活の支援。

アライド・ブレインズからは、WCAG1.0の適合状況判定ソフトのデモや、既成のガイドラインだけでは良くわからないため、 テンプレート (デザインパターン)の話もありました。ここらはオブジェクト技術の分析設計モデリングで使われる、アナリシスパターンやデザインパタ-ンという下敷き(テンプレート)と同じです。人間の脳の中で高速処理をするため、パターン認識(マッチング)をしたり、複雑な顔の情報を超高速処理をするため、専用の顔細胞(ハードウエア)もあると同じ効果です。

トッププレイヤーは頭が良い

雑談の中での話ですが、サッカーのトッププレイヤーは試合場にもう一人の自分がいるそうです。試合場の上から全体を鳥瞰的に見ている自分。中田は絶えず周辺を見ています。彼の頭の中には動的な全体像が写っているのでしょう。イチローも動体視力は抜群のようです。「脳と視力と身体能力」は密接に絡んでいます。無駄な動きがなく最短経路で簡単に行うことが、プロのアスリートです。脳の中のシナプス回路を最短で進むことと身体能力は密接に関係しています。自分以外の全ての外の環境(戦う相手も含め)の情報を取得し自己との関係を超高速コンピュターで計算し次の手を一瞬で決めます。プロ選手の脳は非常に優れていると言えます。これから起きることの先を予測するための並列処理。

言語を理解するのも彼らは抜群のようです。サッカーの小野選手は殆ど日本人が発音できない言語をいとも簡単に非常に短い間に話せるようになっています。昔、「伊藤みどりや千代富士をは凄い」と言っていました。殆ど学校もいかないのに、スケートや相撲の世界で色々勉強し苦しんで頂点に到達した。その過程で物凄く人生を学習したんだろうと。スケーや相撲は違いますが、その頂上に登攀する過程プロセスは抽象化したら似ていると言うことです。

“一芸に秀でたる者は全てに秀でる”と。福田先生曰く“天は1人に二物も三物も与える!”とおしゃられました。彼らはまさにフィールドワークをしています。小さい頃から、学校や塾で人生をすり減らし、受験勉強し受験テクニックを身に着けて、東大に入学してもナンボのもん?20年でアホになるズーと前からアホなんです。「獲得した知識を動員して解の存在する問題を解くこと」と「解のない問題を発見し思考錯誤や仮説検証にて探索し解を見つけていくプロセス」とは、似て非なる?青色LEDの中村さん「新しい発見発明を成し遂げたかったら過去の論文は一切読むな!」と。

時空間の中の多様体

凝視する中心視と周辺視との空間的な関係は、今を見るか過去を見るか未来を見るかと同じです。時間的に過去と未来は周辺視と言えます。危険の予測ですから、特に必要なのは未来です。注意力は「深さx広さ」の長方形面積一定の法則があります。深く狭く見ることは慣れていますが、特に周辺視をうまく使い浅く広く動的に捉えることは慣れていません。狩猟民族と農耕民族の差も関係しているのかも知れません。

4次元時空間の中の原点を中心とした楕円球のような多様体が視野領域とします。局所的な矩形では変化は補足できません。近視眼的に今しか見ていないと、予想は直線近似してしまいます。エコノミストの予想が当たらないのはこのせいです。景気に与える可能性のある要素は過去未来現在の無数の森羅万象にあります。その中から今(過去)に合うような要素を都合良く選んで来る仕事です。その選び方は自分の得意なメソッドに従います。エコノミストにアイカメラをかけさせどこを見ているのかチェックしたい! しかし、これはエコノミストだけではありません、我々全てに関係することです。

日経朝刊第一面に、ICチップと携帯とでのバリアフリーインフラ基盤構築のニュースが載っていました。ユニバーサル社会の実現です。ITは企業競争力を向上するパワーがありますが、このようなバリアフリー社会のインフラの最強の役割があります。年齢、国籍、障害の有無にかかわらず全ての人が便益を得られる社会は知識社会転換への前提です。

著者紹介

戸並 隆 (となみ たかし)
アルゴ21シニアコンサルタント、ITコーディネータ

「トナメ~ル」というメルマガを発行している。

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