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続・弱視にまつわるエトセトラ:角膜移植手術の経過報告

[ 2005年8月29日 ]

執筆担当
伊敷 政英
(いしき まさひで)



以前、 「弱視にまつわるエトセトラ」 というコラムで、筆者の場合を例に、弱視の人の見え方や、パソコンやウェブの使い方についてご紹介しました。

しかしその後、私の目の状態は大きく変化し、今年1月には角膜移植手術を受け、ものの見え方や日常生活も大きく変わりました。

そこで今回は、私事で恐縮ではありますが、手術の経過報告をさせていただきたいと思います。このコラムを通じて、「見える」とはどういうことなのか、少しでも思いをめぐらせていただければと思います。

角膜移植手術を受ける経緯

以前のコラムでも紹介しましたが、私は先天性の弱視です。角膜移植の話は子供の頃からあったのですが、目が小さすぎる、移植をしても視力回復はそれほど見込めない、などの理由から、手術をせずにいました。

ところが昨年の夏、「水疱性角膜症」という病気になりました。これは、角膜に水がたまってむくみ、また角膜表面に水疱ができて、角膜が濁ってしまうという病気です。表面の水疱がはじけることがあり、チクチクしたような強い痛みがあります。特に光を見ると痛むので、部屋を暗くして寝ているしかありませんでした。

医師に相談したところ、「20数年間使ってきた角膜が限界になってきているので、角膜移植を受けた方がよい」ということになりました。近年、新しい免疫抑制剤も開発され、移植後の拒絶反応もある程度、薬でコントロールできることもあって、角膜移植を受ける決心をしました。

アイバンク

角膜移植手術を受けるためには、アイバンクに登録して、ドナーからの角膜提供を待たなければなりません。最初、保険がきく国内のアイバンクでの提供を待ちましたが、登録時に10人待ちだったのが、その後4ヶ月待ってもまだ8人待ちという状態でした。

そこで、それなりの費用はかかりますが、海外のアイバンクから提供を受けることにしました。海外の場合はドナーカードを持っている人が多く、角膜の提供数が多いため、登録すればすぐに手術日程を決めることができました。

移植後の見え方や日常生活での変化

2005年1月31日に角膜移植手術を受けました。翌朝には眼帯も取れ、ギッターというゴーグルのような器具で目を保護しながら生活するようになりました。

術後の見え方で最初に変化が見られたのは食べ物の色でした。どれも鮮やかで、とってもおいしそうに見えました。特に野菜、それもほうれん草や小松菜の濃い緑がとても鮮やかでした。

3、4日すると、人の顔が見えるようになりました。手術前までは人の顔をそれほど意識していなかったのですが、家族や医師、看護師さんの顔がわかるようになり、「この人は結構四角い顔なんだ」など新たな発見がありました。また、顔がわかるようになってから、相手の目を見て話すことを心がけています。

退院後

術後10日ほどで退院となりました。退院当初は、すべての色をクレヨンでベタッと塗ったような感じがしていました。また、視界全体がうるんでいるような、少し浮いたような感じもしました。この頃は、「以前よりもものがよく見える」という状況に慣れず、今までまったく見えなかった道路のひび割れやタイルの境目、またフローリングの床の木目などを「気持ち悪いなあ」という感情で見ていました。

退院後1週間ぐらいで、このような視界が浮いたような感じは落ち着きました。そして日を追うごとにいろいろなものが見えるようになってきました。ここでいくつか挙げてみます。

テレビ

自宅では普段、25インチのテレビを見ています。移植前までは、画面上の文字を読むときは画面にくっついて、また映像全体を見るときは30~50cmぐらいの距離で見ていましたが、手術後は1m程度離れて見るようになりました。

また、サッカーの試合を見られるようになりました。以前はボールの行方を追うことができず、試合を見ることができませんでしたが、術後は、今、どっちのチームがボールを持っているのかがわかるようになり、ゲームの流れをつかめるようになりました。

読書

以前は、拡大読書器という機械を使って本を読んでいたのですが、術後は眼鏡とルーペ(倍率5倍)で読めるようになりました。そのおかげでリビングや布団の上など、拡大読書機がないところでも読書ができるようになりました。

さらに読書にかかる時間も短くなりました。本の種類にもよりますが、拡大読書機を使って読むのに丸1日かかっていた本を、3時間ほどで読めるようになりました。

看板

見え方が落ち着いてくると、看板がやたらと気になるようになりました。文字が見えるので、いちいち読んでしまいました。

以前は、よく行く店はわかるものの、その隣に何があるのかはわからなかったのですが、手術後は、隣や3軒先の店の看板が見えるようになり、よく行っているTSUTAYAの隣は実は喫茶店だったのかと初めて気づきました。

また、以前は目的のある店に行っていたのが、駅前の商店街をゆっくり歩きながら、片側に何の店があるのか1軒1軒見て、また反対側を1軒1軒見て歩いたりしました。

電車に乗っても窓の外の看板がすごく気になり、見ていました。

遠くの景色

一番感激したのは、遠くの景色が見えたことです。私の家の近所には大きな川があるのですが、この川の土手というと、とても広くて何があるかよくわからないし、ほこりっぽくてよく目にゴミが入るので嫌いな場所でした。

手術後、堤防に上がると、野球をしている人や川の水面、反対側の景色、白いビル、貯水タンクなどが見え、きれいで鳥肌が立ちました。鳥が飛んでいるのを生で見るのも初めてでした。

買い物

欲しい商品をある程度自分で探せるようになりました。また、お店によっては値段やサイズなどの情報がわかることがあり、とても楽に買い物ができるようになりました。

普段からよく行っている喫茶店では、自分でメニューを見て、初めて見つけた飲み物を注文したりもしました。

タッチパネル

自動券売機や銀行のATMのタッチパネルが使えるようになりました。以前は、券売機はボタン式やテンキー付きのものを探して使っていました。銀行ではATMから現金を下ろすことは何とかできましたが、振込みは暗証番号を行員に教えてやってもらっていました。

ウェブや携帯の使い方

手術後、パソコンはそれほど使用していませんが、使う時はZoomTextというソフトで画面を拡大して使っています。以前は、その倍率を7倍にして見ていたのが、5倍でよくなりました。

その結果、以前は自分の見たい情報の場所を探す際に、まずは拡大をせずに(倍率1倍で)だいたいの場所を特定させてから、7倍に拡大して詳しく見るという方法をとっていたのですが、5倍でよくなったので、わざわざ1倍にしなくてもそのままで大体の位置がわかるようになりました。

携帯は画面の色を反転して利用しています。以前よりもメールを良く使うようになり、カメラも使うようになりました。散歩の途中に、土手の景色や赤いツツジなどを写真に撮り、家に帰ってから拡大読書機で拡大して見たりしました。

最後に

移植後1ヵ月経った頃、眼科で視力を測ったところ、裸眼で0.1、矯正視力は0.3になっていました。移植前の視力は裸眼で0.01、しかも矯正は不能でしたので、この数値だけ見てもとてつもない変化です。

術後の見え方を端的に表現すると、「すべての物の境界線がはっきりし、またすべての色がとても鮮やか」という感じでしょうか。そしてこの新しい見え方を、「世界はこんなにもクリアだったのか!」という驚きとともに楽しんでいます。

今回私は、角膜移植という臓器移植を受けました。私の右目には、会ったこともない遠くの誰かの角膜が入っています。そしてその人は、今はもうこの世にはいません。このことの意味をよく考えながら、私にできるすべてのことを、精一杯続けていこうと思います。

2005年8月現在、私の目の治療はまだ続いています。そのため今回ご紹介した見え方が一定しているわけではありません。見え方や視力にまた変化があった際には、随時報告させていただきたいと思います。

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