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音楽を持ち歩きたい

[ 2005年12月26日 ]

執筆担当
伊敷 政英
(いしき まさひで)



2005年も残すところあとわずか。流行語大賞やヒット商品番付なども次々に発表され、この1年を振り返る季節になりました。今年流行したものといえば、なんと言ってもAppleの「iPod」をはじめとするデジタルオーディオプレーヤーです。筆者自身根っからの音楽好きなので、収録曲数が多く小型で軽いデジタルオーディオプレーヤーの登場は大歓迎なのですが、ここで心配なことが1つ。「私にも使えるのかな?」

そこで、今年最後のコラムは、「視覚障害者は音楽を持ち歩けるか」について考えてみたいと思います。

普段どのようにして音楽を聴いているのか

筆者は普段からポータブルMDプレーヤーを愛用しています。危険なので街を歩きながら聴くことはありませんが、通勤や帰宅の電車内ではいつも音楽に浸っています。また自宅ではWindows Media Playerを使って、好きなアーティストの新曲を視聴したりインターネットラジオを聴いたりしています。

今年の1月に角膜移植のため入院した際にもポータブルMDプレーヤーを持っていったのですが、あまりたくさんのMDを持っていけないので、どの曲を持っていくか悩んでしまいました。そのとき初めて「デジタルオーディオプレーヤーがあれば、小さいし、収録曲数も多くて助かるのになあ」と感じました。

音楽を持ち歩くために必要なこと

視覚障害者が音楽を持ち歩けるためには、以下の3点が最低限必要です。

  1. オーディオプレーヤー本体が使えること
    まず、ボタンの位置やボタン同士の境界を手で触って識別できることが必要です。またボタンを押したときの沈み具合も重要なポイントと言えるでしょう。最近の家電製品のようにボタンを押したときの沈みが浅いと、きちんと押せているかどうかわかりにくいので操作していてとても不安になります。さらに、充電の残量や電源が入っているかどうかといった操作に必要な情報や、曲名、アーティスト名、アルバム名など収録曲に関する情報を音声で知らせてくれるような機能があれば、視覚障害者も安心してオーディオプレーヤーを使うことができるでしょう。
  2. オーディオプレーヤーに曲を転送したり、整理するためのソフトウェアをスクリーンリーダー(音声読み上げソフト)で使えること
  3. 音楽配信サイトのアクセシビリティが確保されていること

このほかにも「ヘルプやマニュアルのアクセシビリティは確保されているか」「メーカーのウェブサイトのアクセシビリティは確保されているか」などチェックすべきポイントはありますが、上に挙げた3点が特に重要なポイントになります。そのため本稿ではこの3点について考えてみたいと思います。

iPod + iTunes + iTunes Music Store

デジタルオーディオプレーヤー流行の火付け役といえば、やはりAppleの「iPod」シリーズではないでしょうか。そこでまずはiPodと、付属のマルチメディアソフトiTunesが使えるかどうか調べてみました。

現在発売されているiPod, iPod mini, iPod Shuffle, iPod nanoを見てみると、iPod Shuffle以外の3機種の操作ボタンはとてもフラットになっているので、手で触ったときの感触でボタンの位置やボタン同士の境界を識別するのが難しく、正確な操作が困難になっています。実際にiPod nanoを触ってみたのですが、意図しないところでボリュームを上げてしまったり、曲を早送りしてしまったりなど、何度も誤操作をしてしまいました。

また、これら3機種には液晶ディスプレイが搭載されていて、画面を見ながら操作するように設計されています。この設計自体には問題はありませんが、画面に表示されている内容を読み上げる機能があれば、より安心してプレーヤーを操作できるでしょう。いきなりすべての情報を音声で読み上げさせるのはハードルが高いかもしれませんが、ボタンを押した際に反応音が鳴ったり、充電の残量や電源の入り切りなどの重要な情報を「ピッ、ピッ」とビープ音で伝えてくれるだけでもかなり使いやすくなると思います。

一方iPod Shuffleの操作ボタンにははっきりとした凹凸があり、手で触っても十分に識別できます。液晶画面も搭載されておらず操作もいたって直感的です。小型化するために機能を必要最小限に限定したことが功を奏し、直感的な操作インターフェイスになりました。そして結果として、視覚障害を持つユーザーにも使えるオーディオプレーヤーとなったことは、とても評価すべき点だと思います。現時点では、視覚障害を持つユーザーにとってはiPod Shuffleが一番安心して使えそうです。

次に、iPod付属のマルチメディアソフトiTunesがスクリーンリーダーで利用できるかどうか調べてみました。2005年12月現在の最新版であるiTunes for Windows 6.0.1 を、PC -Talker XP(高知システム開発)というスクリーンリーダーで読み上げさせてみたのですが、残念ながらほとんどの内容を読み上げることができませんでした。メニューバーのトップ項目や、ソースリスト、収録曲に関する情報などをまったく読み上げないため、聴きたい曲をiTunesで再生したり、iPodへ曲を転送することができませんでした。

最後に、Appleが提供している音楽配信サイトiTunes Music Storeのアクセシビリティについて。大変残念なことにiTunes Music StoreにはiTunesからでないとアクセスできません。上にも書いたようにPC-Talker XPではiTunesを操作できないため、iTunes Music Storeの内容も一切読み上げることができませんでした。

最後に

「視覚障害者は音楽を持ち歩けるか」について考えてきましたが、少し残念な結果になってしまいました。最近ではレコーディングから公開までの期間短縮や、コスト削減の観点から、CDは販売せずネット限定で楽曲をリリースするアーティストも出てきています。また今後は音楽以外にも、ポッドキャスティングを用いてニュースや語学コンテンツなどの配信もますます増えてくると予想されます。特にオーディオブックの配信が増えれば、活字の本を読めない視覚障害者にとって大変便利になり、とてもうれしいことだと思います。

デジタルオーディオプレーヤー本体、プレーヤーに組み込むファームウェア、曲を転送・管理するマルチメディアソフト、そして音楽配信サイト。それぞれの設計段階からさまざまな属性を持ったユーザーがいることを想定し、緊密に連携をとりながら開発を進めていくことが大変重要です。

エンターテイメント分野におけるアクセシビリティやユニバーサルデザインは、日常生活に最も密着した身近な分野なのかもしれません。1日も早く、視覚障害者が気軽に音楽を持ち歩ける日が来ることを切に望み、また私自身、その実現に向けて少しでも貢献していきたいと思います。

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