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わたしとWebとパソコンと
No.1 視覚障害者の暮らしにとって(後編)

[ 2007年9月27日 ]

岩渕正樹さんの写真 インタビュアー
岩渕正樹さん
(いわぶち まさき)

吉田有紀子さんの写真吉田有紀子さん
(よしだ ゆきこ)



前回に続いて、「ゆっこさん」こと吉田有紀子さんのインタビューを紹介します。(前回のインタビューを読む

予想外だったこと、困っていること

岩渕:ところで、パソコンを使い出したことで、ウェブを利用し出したことで、予想外だったことはありましたか?

ゆっこ:本が読めるというのは予想外でした。あと、大抵のことは自分なりに工夫したり慣れたりしてメール以外にも音声環境でできるんだなぁというのも予想外でした。

岩渕:パソコンを使う上で、ウェブを利用する上で、こういったところは使いにくいということがありますか?

ゆっこ:フラッシュだとか視覚に訴えるようなページが最近多いので、情報を正確に受け取れないのが使いにくいです。一番困るのがインターネットバンキングをしているとき、きちんとリンク名を書いていないサイトがあることです。ファイル名を読み上げてしまうので、何をしたいとき、どこのリンクに入ったらいいのか、分からなくなることがあります。あとやたらとフレームが分かれているのも使いづらいですね。

岩渕:どういったふうにサイトを作ると分かりやすくなるんでしょうか?

パソコンサポートをする吉田さんの写真

ゆっこ:リンクには長すぎず分かりやすい言葉を使ってほしいと思います。あと、ただ「何とかはこちら」も分からない人がいるんじゃないかと思います。住所とか電話とかの情報を画像化してペタっと貼ってあるだけなのも困ります。フレームが細分化されているのも困りますね。

岩渕:それって、見えていない人だけに困るページじゃないですよね。そういう作り方をしているページって、見えている人への配慮も足りないページになっているじゃないか…そんな傾向を感じてます。

ゆっこ:ハデで目立つページを作りたいのは分かるんだけど、読まないことには情報が無いのと同じわけで、補うような情報をつけてほしいと思います。

サイトに要望、反応は?

岩渕:使いにくいところにどのような設定や工夫をしているのでしょうか?

ゆっこ:たとえばサウンドの設定とかして、なるべく音でも分かるようにしています。エラーメッセージとかも読まないので、エラーになったらエラーの音が出るようにしています。あと、サイトを見て分からないときには、直接相手に電話をしたりメールで問い合わせるようにしています。時には「こうしたら私たち視覚障害者でも読めるんですけど」と要望を出します。

岩渕:要望を受けた相手の反応はどうでしたか?

ゆっこ:一応みんな「考えさせていただきます」と言ってくれます。でもどうしたらいいかとか何をしたらいいかを聞いてきてくれることはあまりありません。オルト属性(代替テキスト)に関しては「善処します」と言ってくれます。メールでの問い合わせに関しては、親切に答えてくれます。それで後でサイトを見た時に、少しでも改善が見られた時や、わからないなりにも対処してくれている時はとてもうれしいです。

岩渕:メールアドレスが載っているところは確かにそうだと思いますが、メールアドレスの載っていないところなんてありませんでしたか?

ゆっこ:そういうのは無かったと思うけど、あったとしてもそういうところはそういうところなんだなぁと思うから。

岩渕:いずれにしても、メールなり電話なり、問い合わせ先が分かるようなサイトだと、アクセスしていて安心できますね。

ゆっこ:メールアドレスがそのままリンクになっていたり、お問い合わせがメールアドレスとのリンクになっているところって、親切だなと思います。メールアドレスがテキストで書いてあるだけだと、インターネットに慣れていない人はこれをどうやってメールに書けばいいかが大変なんですね。メールアドレスを選んで実行するとメールアドレスが宛先に入力された状態でメーラーが起動するようになっていると助かります。

パソコンやソフトのメーカーに

岩渕:この際ですから、パソコンやソフトのメーカーに、こうなるともっと使いやすいのになぁというご希望をお聞かせください。

ゆっこ:なんせ音が出ればできることって沢山あるので、標準装備でなくてもいいから、読み上げ環境がオプションで選べたり、フリーズや砂時計を音で示したりしてパソコンの状況が音で確認ができるようにしてほしいと思います。

岩渕:ソフトのインストールでもそうですね。

ゆっこ:CD-ROMを入れたら、あとはエンターだけで操作できるようになっているのが楽です。「OK」「キャンセル」「次へ」だけでは、見える人がいないとインストールができません。これは、視覚障害者だけでなく高齢者もそうだと思います。声でのサポートがあると、使いやすくなると思います。

岩渕:視覚障害者向けのソフトのインストールでしている配慮ですが、他のソフトのインストールでも取り入れると助かる人がけっこういると思います。

ゆっこ:キーボードを押しにくい人もいるわけですし。

利用しやすいホームページ?

岩渕:ウェブがこうなると、もっと利用しやすくなるのに…という要望もどうぞ。

ゆっこ:とりあえず、リンクに名前をつけてほしいです。あと、仕方ないのかもしれないけど、クリッカブルマップを多用するのはやめてほしい。音声だと、「マップマップマップ」しか言わないし。

岩渕:それって、クリッカブルマップだけで、オルト属性を入れてないんじゃないのかな。でも、この要望って、「もっと利用しやすくなるのに」以前の問題ですよね。

ゆっこ吉田さんの顔写真視覚とか聴覚に訴えるのはいいんですが、ページを開けた途端、音楽が鳴るのはビックリしますね。「聞きたい人はこちらからどうぞ」と自分の意思で聞くのはいいと思うんですが、急に流れるのはちょっと。

岩渕:何を隠そう、私も音楽が聞こえてくるのはダメで、音楽を聞きながらパソコンなんてトンドモありません。字を読むことと音楽とが同居できないんです。だから、パソコンにヘッドフォンを挿しっぱなしにして、聞きたいときだけ聞こえるようにしています。

ゆっこ:特に私たちはスクリーンリーダー(音声読み上げソフト)を使っているからだけど、私もダメですね。

岩渕:じゃ、「サイトメロディ」なんて、トンデモ無いですか?

ゆっこ:実は私も使いたいと思ったんですけど、CMとかは音が大きいし、「サイトメロディ」が聞えている間はスクリーンリーダーの声が聞えにくいので実現していません。

岩渕:そうですね。流すにしても、数フレーズ程度してほしいものです。

ゆっこ:オルゴールくらいの、ちょっと聞えるくらいの。

ケータイも音声ガイドで

岩渕:ところで、パソコン以外でも、ケータイを使って便利なサービスを利用できるようになってきましたが、ケータイを使うことで今までできなかったことができるようになった、あるいは、またできるようになったという経験はありますか?

ゆっこ:音声ガイドで操作を案内するケータイにしてからは、以前のように電話帳を見ることもできるし、かけたい相手にかけることができるようになりました。見えなくなってすぐのときは、相手の電話番号を誰かに見てもらい読んでもらわないと電話もかけられなかったですから。一度駅を乗り越してしまって相手に電話しようと思ったとき電話番号を度忘れしてしまったことがあって、それをきっかけに音声ガイドのあるケータイに切り替えました。

岩渕:この間、ある人から「迷子になったときケータイのテレビ電話機能で周りを撮影して家族に見てもらい、自分がどこにいるのか教えてもらう」という話を聞きましたが、迷子のときにケータイが役立ったなんてことはありましたか?

ゆっこ:迷子ではないんですが、友達が紙に印刷されたものを見える友達にテレビ電話して、これはただの広告なのか、必要なものなのかを見てもらっているというのは聞いたことがあります。

岩渕:見えないからといって、ケータイのカメラ機能やテレビ電話機能が関係ないというわけでもないんですね。思わぬ使い方もあるようですし、他にももっと面白い使い方があるような気がしてきました。

ゆっこ:ケータイに限らず、普段みんなが使っている方法とは違う形で使っているけれども、工夫次第ですごく便利に使えるものってあると思います。

岩渕:そういったユーザーの声を吸い上げて活かすと、メーカーもお客さんの発掘につながって売り上げが伸びると思いますね (笑)

ゆっこ:(笑)

新しい技術と使いやすさと

岩渕:アクセシビリティはICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)の進化と密接な関係にあるわけですが、でも、新しい技術って、その技術だと使えない人を生み出してきましたよね。「ブログが流行ればブログ!ミクシィが流行ればミクシィ!」といった具合に、技術の進化や流行を追いかける人や使いたがるサイト…。技術の進化は否定しませんが、インターネットやパソコンやケータイが広がったことで、今までできていたことができなくなってしまったという経験はありますか?

ゆっこカメラを持つ吉田さんの写真今は何でもデジタル化して、表示をみて操作するものが多いんですが、そういうものは使えません。昔だったら電子レンジもダイヤルで時間を設定できたんですが、今はデジタル操作で、しかも、ボタンもタッチパネルやちょっと浮き出たようなボタンで、分かりづらく押しづらくなっているように思います。

岩渕:洗濯機もそうですね。

ゆっこ:「障害者にも使いやすい」を謳ったケータイでタッチパネルを使ったものもあったようなんですが、何でもかんでもデジタル化はどうかと思います。

岩渕:タッチパネルだと使いにくいのは視覚障害者だけではなく上肢障害者もそうですし、私の場合、指先が湿っていないからなのか、エレベータのボタンが押すタイプではなく触るタイプだと、なかなか反応しないことがあります。使う人には色々な人がいるんだということを考えて作ってほしいと思いますね。

ゆっこ:ですね。

さて、A.A.O.?

岩渕:色々と聞いてきましたが、最後に、このインタビューが掲載されるA.A.O.についてもお聞きしたいと思います。ゆっこさんには2年ほど前にも「A.A.O.サイトのユーザテスト」に協力してもらったことがありましたよね。障害をもっているユーザーという立場から、A.A.O.のこういったところが使いやすい、音声で聞きやすいといった他のサイトにも見習ってほしい点はもちろんですが、A.A.O.サイトを閲覧していて困ったこと、改善してほしいなと思ったことも、ご遠慮なくどうぞ。他のサイトには率直に言い過ぎると御幣があるかもしれませんが、「A.A.O.はアクセシブルなウェブをめざす提供者と利用者のための実用サイト」を掲げているのですから、2年経ったのに直ってない!も含めて遠慮は無用です(笑)

ゆっこ:「お問い合わせ」についてですが、中に入ってから、もう一度アドレスへのリンクがあり、その下にウェブからの送信フォームがあるのは、少し紛らわしいと思いました。「お問い合わせフォーム」というのと別にアドレスへのリンクがあるのに、「お問い合わせフォーム」の中にもアドレスのリンクがあるのも分かりづらいと思います。
また、メールアドレスの上に「アライドブレインズ株式会社」のリンクがありますが、これも紛らわしいと思います。 この「アライドブレインズ株式会社」の中の「お問い合わせ」のリンクには、セキュリティがどうのこうのでページが開けず、入れませんでした。

「ウェブアクセシビリティ通信」の申し込みのリンクですが、リンクに「お申し込みはこちら」しか書いていないので、何の申し込みか分かりづらいと思います。「ウェブ通信アクセシビリティお申し込みはこちら」とか「ニュース受信お申し込みはこちら」とかにした方が、リンクだけを辿っていっても分かりやすいと思います。

あと、「お悩み相談コーナー」ですが、最初のページでは回答だけがリンクになっていて、その回答のページに入ると、回答の後に「お悩み1」「お悩み2」などのリンクがありますが、初めのページで質問を簡潔な言葉でリンクにして、その中に詳しい質問と解答、もしくは回答がリンクになっていた方が、分かりやすいのではないかと思いました。「お悩み1」「お悩み2」というリンクは、いちいち中に入って見なくてはいけないので、あまり意味を感じませんでした。

サイト内検索もあり、「本文へ」のリンクもあり、全体的には見やすいと思いますが、トップページの全体の量が少し多いようにも感じました。とりあえずこんな感じです。これじゃサイトチェックみたいですね (笑)

岩渕:ほんと、サイトチェックみたいになってきました (笑)。今回、久しぶりにA.A.O.の感想をいただいたわけですが、「アクセシブルなウェブをめざす提供者と利用者のための実用サイト」を掲げているA.A.O.であっても、前回見直してから2年も経つと気付いていない点がまた出てくるわけですから、障害をもったユーザーの声を受け止めてサイトを見直すって大事なんですね。

ゆっこ:視覚障害者だけがアクセスしているのではないから、そのあたりの折り合いをつけるのが難しいですよね。みんなのことを考えて、みんなが使いやすくというのはとても難しい。これで完璧、誰も文句を言わないというのはあり得ないので。

岩渕:何らかの指摘をしたくなったところがあったとして、それが「文句」に聞こえるかというとそんなことはないのであって、サイトチェックのお仕事じゃないんだから、まるでダメなら「文句」もナニも黙って立ち去りますよね (笑)。でも、そのサイトを何かしら評価し期待しているからこそ、これじゃモッタイナイと指摘しているわけで、ちゃんとしたサイト提供者なら真摯に受け止め、アクセシビリティ改善の機会にしてくれると思います。本日は、どうもありがとうございました。


写真提供:近藤尚之

A.A.O.の担当者から吉田さん(ゆっこさん)へ

長時間のインタビューにご協力をいただき、まことにありがとうございました。吉田さんの「なんせ音が出ればできることって沢山あるので」という言葉を、できるだけ多くの人に伝えたいと感じました。

吉田さんにはこれまで様々なサイトの評価テストにもご協力をいただいていますが、A.A.O.にも約2年ぶりにコメントをいただいています。いろいろな人にとっての使いやすさを考えつつ、できることから取組んでいきたいと思います。いずれもなかなか悩ましいご指摘ですが、「お問い合せ」のページの構成、「ウェブアクセシビリティ通信」の申し込みのリンク、「お悩み相談コーナー」のリンクについて、音声で少しでも分かりやすくなるように調整をしてみました。

今後、いろいろなご意見を聞きながら社内でも議論し、より使いやすいサイトを模索していきたいと思います。ご協力どうもありがとうございました。(大久保)

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