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アクセシブルなPDF文書を目指して

執筆担当
伊敷 政英
(いしき まさひで)



PDF文書は、いまや自治体の広報や企業の製品カタログなど、私たちの生活に密着したさまざまな場面で利用されています。「電子文書といえばPDF」。そう言っても既に過言ではないでしょう。

さて、「生活に密着した場面で利用されている」ということは、「多くの人が利用できる」ということが前提としてあるべきだと思います。この「多くの人」の中には、もちろん障害者や高齢者も含まれます。ということは、PDF文書に対してもアクセシビリティというテーマがかせられる、ということです。

では実際はどうなっているのでしょうか。そこで今回は、PDF文書におけるアクセシビリティの現状について考えてみたいと思います。

アクセシブルなPDF文書とは?

まず、そもそもアクセシブルなPDF文書とはいったい、どういうものなのでしょうか。

PDF文書が「アクセシブルである」と言えるためには、大まかに次の3つの条件を満たす必要があります。

  • 1. 音声読み上げソフトのユーザーが、文書中のテキストにアクセスできる
  • 2. 文書の読み上げ順序が適切である
  • 3. 画像などの視覚情報に対して、テキストによる代替情報が提供されている

上の条件のうち2.と3.は、通常のウェブページ(HTML文書)のアクセシビリティを語るときにもよく話題に上りますが、1.については、PDFやFlashなどのHTML周辺技術を用いる場合に最も基本となる条件です。

ポイントはセキュリティ設定にあり

では、この最も基本的な条件について考えてみましょう。「文書中のテキストにアクセスできる」とはどういうことでしょうか。

ポイントは、PDF文書へのセキュリティの設定にあります。

音声読み上げソフトは、PDF文書中のテキスト情報を取り出して読み上げています。ところが文書へのセキュリティ設定によっては、この「文書中のテキスト情報を取り出す」という作業ができなくなってしまうのです。

「文書中のテキストにアクセスできる」ということは「音声読み上げソフトに対してテキスト抽出を許可するように、セキュリティの設定が適切に行われている」ことだといえます。

どうすればいいの?

では、セキュリティをどのように設定すれば、音声読み上げソフトでテキストにアクセスできるようになるのでしょうか。

そこで登場するのがAdobe Acrobatの「パスワードによるセキュリティ設定」機能です。これは文書を開く際や、セキュリティの設定を変更する際にパスワードの入力を求めるようにできる機能です。ここの設定を適切に行うことによって、音声読み上げソフトでPDF文書を読み上げられるようになります。

以下、Adobe Acrobat6.0を例にして手順を簡単に説明します。

まず [ファイル]→[文書のプロパティ]で「文書のプロパティ」ダイアログボックスを開き、その中の「セキュリティ」タブで「パスワードによるセキュリティ」を選択し、「設定を変更」ボタンをクリックします。すると「パスワードによるセキュリティ設定」ダイアログボックスが開きますので、次のいずれかのチェックボックスにチェックを入れます。

  • テキスト、画像、およびその他の内容のコピーとアクセシビリティを有効にする
  • スクリーンリーダーデバイスのテキストアクセスを有効にする

チェックを入れる場所は、ダイアログボックス内にある「互換性のある形式」の設定によって変わります。

[OK]をクリックして、設定完了です。

読めるようにはなったけれど…

これで音声読み上げソフトでテキストにアクセスできるようになりました。しかしこれは、PDF文書をアクセシブルにするための第1歩を踏み出したに過ぎず、あと2つ、やるべきことが残っています。

しかしこの2つを実現するためには、現状では多くの課題が残っています。

PDFはセカンドベスト

条件2.と3.における課題
条件 条件を満たすためにやるべきこと 現状における課題
2. 文書の読み上げ順序が適切である タグ付きPDFを作成する 作成手順が煩雑で、作業も大変
3. 画像などの視覚情報に対して、テキストによる代替情報が提供されている Microsoft OfficeやAdobe Acrobatを用いて、画像等に代替テキストを付与する 日本語の代替情報が文字化けする場合があるなどの不具合がある

これまで見てきたことから考えると、「現状では、PDF文書をアクセシブルにするには限界がある」と言わざるを得ません。アクセシビリティの観点から言うと、HTMLやXHTMLによる情報提供がベストであり、PDFはセカンドベストになってしまいます。そのためPDF文書で情報提供を行おうとする場合には、「これはHTML文書では提供できないか」ということを事前に十分検討する必要があります。

そして検討の結果、やむを得ずPDF文書で情報提供を行う場合には、以下の点に注意することが重要です。

  • 文書へのセキュリティ設定を適切に行い、音声読み上げソフトでテキストにアクセスできるようにする
  • HTML文書やWord文書など、PDF以外の形式でも情報提供を行う

PDFはセカンドベストです。 用法、用量には十分にご注意ください。

(補足)

生まれつきの弱視である筆者の個人的な感想ですが、Adobe Reader 6.0およびAcrobat 6.0のアクセシビリティ機能の中で、最もよくなったことは「発色がよくなった」ということだと思います。アクセシビリティ機能として取り上げられることはあまりないですが、発色がよくなったことでPDF文書は格段に読みやすくなりました。PDF文書は今後、よりアクセシブルな方向へと進んでいくと思います。皆さんも「現状では限界があるけれども、できる限りアクセシブルにしよう」という前向きな姿勢でがんばっていただきたいと思います。

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