レポート 公共サイト運営の最前線
第2回「CMS導入プロジェクト成功の秘訣 ~三鷹市公式ホームページの経験から~(後編)」
[ 2009年5月22日 ]
ゲスト
三鷹市企画部秘書広報課
担当課長 秋山 慎一さん
広報係 主査 今野 聡さん
利用者視点の分類には職員、CMS事業者とも慣れていない
アライド:コンテンツの移行に際しては各課職員の方の協力は欠かせないと思いますが、どのように協力を依頼されたのですか?
今野:移行を始める前に、リニューアル後のホームページの構成や移行スケジュールについて、職員向けの説明会を開きました。その後、移行対象ページのリストを各課に提供して、新しいホームページに移行するかどうかを尋ねました。各課との最終調整には、結構苦労しました。基本的に各課とは移行リストのエクセルシートをやりとりして調整を進めていったので、実際のホームページの構成がよくイメージできなかったようで、最終確認の段階になって、このページはやはり必要だった、不要だったということが発生しました。各課との調整は早い段階でやったほうがよかったのだなと思いました。
今回、利用者の視点に立って情報の分類方法をかなり変えたので、異論を唱える人もいました。役所の職員はどうしても課が基点となってサービスがあるという考えになってしまうので、課の名前に近いものが分類だと思ってしまいます。つまり、自分の部署に関わるページが複数の分類に分散されるということがあまり好ましくないという考えになってしまうのです。しかし、市民の方が必要なのはサービス内容であって、それをどこの課がやっているかではありません。その考え方を職員に理解してもらうのは結構苦労しましたね。
アライド:CMS事業者さんはどのように対応されましたか?
今野:三鷹市のように、ある課の情報を複数の分類に配置するという考え方はCMS事業者さんも持っていないようで「本当に大丈夫ですか?」と聞かれました。その際、何回も、「ホームページ全体のコンテンツを全部寄せ集めて、広報で全てのコンテンツを見た結果、こうあるべきだと結論を出したのだから間違いはない」と言い切りました。そこでぐらついてしまうとガタガタ全部崩れていってしまうので、そこを守ることも結構大事でしたね。
アライド:職員の皆さんの反応はいかがでしたか?
今野:職員は課の垣根を越えて情報を出していくということに慣れていないので、今後運用の際には職員の理解を一層深め、それを進めていくこともとても大事なことだと思います。
アライド:業務は縦割りのところがありますからね。
今野:あるサービスをA課とB課で横断的に提供している場合でも、情報提供となるとA課だけの情報でページが完結してしまったりすることがあります。
アライド:今回の三鷹市さんがやられたような形で、複数の部署が連携して情報提供しているページがあったりすると、そこから逆に部署間の横のコミュニケーションが少しずつできてくる可能性もありますよね。
今野:そこから縦割りを変えていけると思います。
アライド:それはすごいことですね。市民と役所の距離が急速に縮まる感じがします。
嬉しかったこと
今野:私たちは公開まで相当綿密に準備をしてきたので、3月3日の夜にようやく公開できた際、新しいホームページに切り替わった瞬間を見てくれていた職員に、「いいものができたね」「丁寧にやったのがわかる」「すごく一生懸命やったんだね」と言われた時には、涙が出るほど嬉しかったですね。
ページの移行の際には各部署の職員からも色々と意見が出ましたが、こちらも思いつきでやっているのではなくて、色々考えた結果こうしている、ああしていると伝える努力をしたおかげで、職員もそれなりにわかってくれたのだろうと思います。公開後に会うと「大変だったでしょう」と声をかけてくれた職員もいます。
アライド:ウェブサイトに限らず、思い入れがあって、ギリギリまで妥協しないで頑張ったものは、できあがったものに魂が入っていると思います。見る人に伝わる感がありますよ。
今野:そうだろうと思います。まわりに理解してくれる方がたくさんいたのがよかったと思います。
アライド:それだけいい評価が出たということは、今後は維持・向上が大変ですね。
公開前に必ずやること、公開後にやればよいことを切り分け
アライド:今回のリニューアルのプロジェクトでもう少し突っ込んでやりたかったことや、今後の課題として残ってしまったというものがあればお聞かせいただけますか。
今野:今回のリニューアルで相当ホームページの構造が変わりましたが、なぜ構造を変えたかということについて職員の理解をもう少し深めた上で公開したかったですね。とりあえず職員がページを作るための操作研修などはしたのですが、コンセプトまではなかなか伝えきれなかったので、今後の課題として取り組まなければいけないと思います。
アライド:ホームページ公開後の今から取り組めることもありそうですね。
今野:市民の皆さんに見ていただく部分は公開後にすぐ直すというわけにはいかないので、デザインに関しては何度も事業者さんに修正を依頼して妥協せずにやりました。事業者の進行管理があまりうまくなかったので、現実問題として作業に優先順位をつけざるを得ず、運用については多少難があったとしても公開後に取り戻そうと思えばできるという考えに切り替えました。