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第15回「評価レベルAの品質を実現・維持する業務ノウハウの熟成と継承」

[ 2026年7月2日 ]

ゲスト
神栖市 企画部 広報戦略課
喜多見雅樹さん
岡野亮太さん



神栖市イメージキャラクターの
「カミスココくん」

茨城県神栖市は、2017年度以降にホームページの品質向上に向けた取り組みを継続的に進められ、A.A.O.ウェブサイトクオリティ実態調査において高い評価を維持するとともに、ウェブアクセシビリティJIS試験では毎年AA準拠の結果を公表しています。

品質向上の経緯から、現在の運用体制、日々の業務における具体的な取り組み、さらに運用を支える組織的な工夫や課題についてご紹介いただきます。


神栖市ホームページの品質向上の経緯

アライド:2019年のリニューアルに向けては、2017年度から本格的な事前準備に着手されました。当時の検証結果データを振り返ると、リンク切れが1,500箇所くらい発生していたようです。また、階層が非常に深くなっている場所もありました。目的の情報にたどり着くまでに時間がかかるなど、利用者にとって必ずしも使いやすい状態とは言えなかったようですね。

神栖市:当時は広報事業を担当しておらず、ホームページの編集にもあまり携わっていなかったので、詳しい事情はわからないのですが、トップページがやや雑然としていたと思います。また、それぞれのページ内に注意喚起のアイコンが多く、どこを見ればよいのか分かりにくい印象でした。

2010年7月当時のホームページ

現在のホームページ


アライド:約2年の事前準備と、約12か月のリニューアルプロジェクトの過程で徹底的な改善に取り組まれ、その後に実施したA.A.O.ウェブサイトクオリティ実態調査ではAレベルを獲得されました。当時の自治体では非常に珍しかったと思います。

神栖市:担当者の努力だけでは実現は難しく、当時から職員向けの研修を実施し、全庁的にアクセシビリティの確保に向けて取り組んできました。また、職員に対しても「皆さんの協力があってAレベルを実現している」というように紹介しています。

神栖市ホームページの取組経緯

品質を確保・維持する広報部門の最終チェック

神栖市ホームページは、各課が作成したページを公開前に広報戦略課で確認する流れで運用されています。

システムの機能に頼るのではなく、広報戦略課の担当者による日々の確認と、他部署職員の意識づけなど、地道な積み重ねによって現在の高い品質が維持されています。日々どのような取り組みを行っているか、伺いました。

神栖市:文章だけでなくソースコードもチェックする必要があり、そこは広報事業を担当するまで知りませんでした。例えばいくつか例をあげると、以下のような点をチェックしています。

  • 見出し構造
  • 階層が適切か
  • 文字間の不要なスペースの有無
  • ソースコード上の記述
  • 添付ファイルの内容やプロパティ(個人情報の有無)
  • 公用文の表記ルール(カンマを読点として使用しないなど)
  • 画像の代替テキスト

アライド:チェックにはどのくらい時間がかかるのでしょうか。

神栖市:情報量が少ないページであれば10分程度ですが、情報量が多いページや修正箇所が多いページは30分以上、新たに作成されたページなど、場合によってはそれ以上に時間がかかることもあります。

神栖市:例えば、最近、公開申請のあったページでは、見出しが全て同じレベルになっていて、情報の区切りがわかりにくいというものがありました。また、表も多く使用されていたので、表形式を解消する必要もありました。

アライド:神栖市公式ホームページでは、できるだけ表を使わないようにしているのですか。

神栖市:スマートフォンで閲覧をしやすくすることや、音声読み上げに配慮した表記に努めており、原則として、表を使わなくても表現できる内容は、見出しや箇条書きで表現することを、運用ルールとしています。

アライド:掲載方法について他部署からの反発などはありますか。

神栖市:「なぜ表が使えないのか」という問い合わせはありますが、ウェブアクセシビリティのルールや必要性を根気強く説明し、理解をしてもらっています。なお、広報戦略課で代替案を提示し、必要な場合には、見直し後の記事を作成、確認してもらって、差し替えています。

アライド:広報戦略課からルールを伝えることで所管部署に理解が得られるという関係性は、長年取り組みを積み重ねて築き上げてこられた組織文化ですね。

システムによるチェックだけでは品質が保てない

神栖市ホームページは、A.A.O.ウェブサイトクオリティ実態調査で、Aレベル、Bレベルといった高評価を獲得するとともに、毎年1回実施するウェブアクセシビリティのJIS試験では、ランダムサンプリングしたページを含めて、適合レベルAとAAに一つも問題が検出されない「AA準拠」を継続しています。品質確保にどのように取り組んでいるか、引き続きお伺いしました。

神栖市ホームページのレベル推移(A.A.O.ウェブサイトクオリティ実態調査結果より)
レベル
2017年 E
2018年 E
2019年 E
2020年 A
2021年 B
2022年 A
2025年 A

アライド:CMSにもチェック機能があると思いますが、お二人が目視で確認されていることが多くあるのですね。

神栖市:組織改編や例規改廃に伴い、掲載されている様式などに修正漏れがないかどうかもチェックしたり、さまざまな市独自の確認も必要となります。機械的なチェックだけでは難しいですね。

神栖市:アクセシビリティの面では、画像に説明文(代替テキスト)をつけたり、図を貼る場合に色のコントラストに問題がないかをチェックしたりもしています。なお、会議中の写真に代替テキストが「会議」とだけ設定されている場合には、「出席者に向けて説明をする市長と、真剣に話を聞く出席者たちのようす」といったように、掲載された写真の内容が伝わるように修正をしています。

アライド:チェック項目が多岐にわたりそうですが、チェックリストのようなものが存在するのでしょうか。

神栖市:基本的な作業のマニュアルは作成していますが、マニュアル化できない部分も非常に多いため、すべてがリストにはなっていません。日常の業務の中で時間をかけて後任の職員へ伝えることを繰り返してきたことで、チェックの視点と精度が引き継がれています。

神栖市:必要な知識を身につけるために、広報戦略課に配属されてすぐにウェブデザインの資格を取得しました。また、アライド社が主催するセミナーにも参加するなど、ホームページの運用に関することについての勉強をしました。

アライド:ホームページに関わる基礎的な知識を習得する機会が設けられているのですね。

アライド:広報戦略課以外の職員の方々に向けて何か工夫されていることはありますか。

神栖市:修正の対応については、誤字などの軽微な修正は広報戦略課で対応しますが、大きな修正が必要な場合は各課へ差し戻しを行います。その際には具体的な修正箇所を示して、再提出を求めるようにしています。このようなやり取りを繰り返すことで、他の課の職員にも徐々にルールが浸透し、差し戻す件数は減ってきているように感じます。

神栖市:そのほか、例えば、ファイルアップロード時に「カンマが含まれていないことを確認しました」や「個人情報が含まれていないことを確認しました」などのチェックボックスを設けて、入力者側の職員にも注意点を意識してもらう仕組みを取り入れています。

かみす舞っちゃげ祭り

掲載場所の決定とサイト構造の維持

個々の記事の内容を入念にチェックするほか、ページの掲載場所やタイトルの設定も広報戦略課が最終決定しています。

アライド:ページの掲載場所はどのように決めていますか。

神栖市:サイト全体の構造を維持するため、各課の意向も聞きながら、最終的には広報戦略課で決定しています。誰でも自由に配置できる運用にはしていません。

神栖市:最近では、公開ページのアドレスを二次元コードでアナウンスすることが増えており、ページの公開後に掲載場所を動かしづらいので、原則、広報戦略課で判断して、間違いのない掲載場所を決定しています。

アライド:掲載場所を設定する際に意識されているポイントはありますか。

神栖市:階層が深くなりすぎないことです。また、担当課からリスト化(階層化)してほしいという要望があった場合は、例えば将来的にそのリストに関連ページを増やす予定があるかなどを確認して、必要性を慎重に判断しています。

アライド:ページタイトルはどのように設定されていますか。

神栖市:まず、ページを作成する担当課で希望のタイトルを付けます。次に広報戦略課で、タイトルが長すぎるものや、文章のようになっている場合は修正します。ページの内容が端的に分かるタイトルの設定を意識しています。

アライド:以前にユーザー評価を実施された際に、一般の方から出た要望を踏まえて、行政用語ではなく市民目線のタイトルに速やかに見直されたことを非常に印象深く覚えています。ページの掲載場所や、内容がイメージできるタイトルなどを、地道に積み重ねてこられた結果、今のホームページの品質を維持されているのですね。

息栖神社


文書化できないノウハウを継承する

アライド:現在も高い品質を維持されていますが、広報戦略課でどのような引き継ぎがされているのでしょうか。

神栖市:私(岡野さん)は入庁して最初に配属された部署が広報戦略課でした。一度にまとめて引き継ぎがあったわけではなくて、実際に業務を行いながら、当時の担当者から細かいところまで教えてもらいました。

神栖市:私(喜多見さん)は、岡野さんの配属の1年後に広報戦略課に異動してきて、気を付けて確認しなければならないポイントを、岡野さんから教わりながら少しずつ覚えていきました。最初の頃は、ページ公開前にチェックするポイントが覚えきれないほどあって、こんなに細かいところまでチェックする必要があるのかと驚きました。

アライド:今となっては気を付けるポイントが身についているのですか。

神栖市:そうですね。こういう対応や表現はしてはいけない、というところはある程度身についています。

アライド:対応を後任に引き継いでいくのは大変ではないですか。

神栖市:業務をしながら覚えていくことが一番早いのかなと思います。文書化できない部分が数多くあるためです。日々の業務の中で、「こういう表現なら伝わりやすいのではないか」ということを、お互いに相談しながら業務を進めています。

デザイン変更や新規構築時に第三者による検証を実施

アライド:新しいテンプレートを作る際に気を付けていることはありますか。

神栖市:トップページのデザインを変えたり、新たなテンプレートを作成する際は、CMSの運用事業者に案を作成してもらった段階で、第三者による専門的なアクセシビリティチェックを依頼し、品質を確保するようにしてきました。

アライド::他団体の事例では、新たにテンプレートを作ってしまってから次の年にJIS試験を行い、その結果エラーが大量に出てしまう、というケースが珍しくありません。神栖市さんは手順として、そうならない工夫がされているのですね。

神栖市:アクセシビリティを確保したうえで完成させるようにしています。

職員研修でウェブアクセシビリティ対応を組織全体に浸透する

神栖市では2017年からウェブアクセシビリティに関する職員研修を継続して実施されています。

アライド:職員のどのくらいの人が受講したことになるのでしょう。

神栖市:現在までに約6割超の職員が受講しています。

アライド:職員研修の役割や効果はどのようなものですか。

神栖市:まず、アクセシビリティについて知ってもらう場として重要です。ホームページを編集する上で、さまざまな厳しい制約やルールがあるので、「なぜそのような対応が必要なのか」を知ってもらう場と考えています。

アライド:参加された方々の反応はどうでしょうか。

神栖市:対応しなければいけないことなんだ、ということを知ってもらえている実感があります。

息栖神社参道沿いにある「息栖にぎわいテラス」からの夕日


神栖市では広報戦略課が最後の砦

アライド:ウェブアクセシビリティなどのホームページ品質を確保するために、CMSなどのチェック機能や支援機能だけに頼って解決しようとするのではなく、広報戦略課の職員の皆様が積み重ねてこられたノウハウの熟成と継承、他部署の職員の皆様への継続的な働きかけが、とても重要な役割を果たしていることがわかりました。

アライド:最後に、これから品質向上に向けて取り組まれる他団体の方に向けてメッセージをお願いします。

神栖市:自治体によってホームページの公開までの流れなどは違うと思いますが、神栖市では広報戦略課が最後の砦だと考えているので、アクセシビリティや記事の内容をしっかりとチェックした上で、ダブルチェックを徹底するなど、問題のない状態でページを公開できるように取り組んでいます。今後も現在の品質が維持・向上できるように気をつけながら業務を進めていきたいと考えています。

神栖市:広報で所管せず各課でページを編集し、公開する自治体もあると思います。ページの公開をする前には、もう一度読み直し、初めて見る人にも内容が理解ができるかどうかを考えた上で公開することが大事だと思います。

アライド:お忙しいところご協力いただき、また、貴重なお話をありがとうございました。


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