レポート 公共サイト運営の最前線
第3回「市民の声を活かしたサイト運営 ~名古屋市公式ウェブサイトの取組み~(前編)」
[ 2009年5月25日 ]
ゲスト
名古屋市市民経済局地域振興部
市政情報課 情報提供係
主事 桑原 慎治さん
主事 坂崎 光恭さん
フィードバック機能活用の効果
アライド:フィードバック機能について説明していただけますか。
坂崎:全ページに「役に立ったか」「情報は見つけやすかった」の5段階評価と、コメント欄を設けています。フィードバックが書きこまれるとまず市政情報課の管理画面で確認できるようになっています。内容を確認して、ページ作成者に伝える必要があると判断した場合、作成者にも管理画面で確認してもらうようにします。
アライド:なぜフィードバック機能を取り入れることにしたのですか?
坂崎:フィードバック機能を導入したのは、より使いやすいウェブサイトにするためにウェブサイトについて市民の方の意見をきめ細やかに聞くためと、市民の方からの指摘事項をページ作成者にフィードバックして、ウェブサイト全体の品質向上に役立てるためです。
アライド:一日あたり、どのくらいのコメントが来るのですか?
桑原:平均すると一日10~15件程度です。多い日には20~30件来る時もあります。また4月など引越しの時期にはごみに関するコメントが集中的に来るなど、コメントの内容は時期によって特徴があります。定額給付金について他の自治体のサイトに情報が載り始めると、なぜまだ名古屋市のウェブサイトには情報が出ないのかなど、社会のトレンドをとらえて書き込んでくる人も多くいます。
アライド:そういうコメントが来た場合、すぐに情報を出さなければいけない、と担当課の人が判断するのですね。
桑原:そうです。市政情報課から担当課に、こういうコメントがあるので名古屋市としても情報を出す必要があるのではないか、とコンテンツの作成を依頼します。
ウェブサイト改善、情報の充実にフィードバックコメントを活用
アライド:実際に市民の方から寄せられた意見をもとに、ウェブサイトを改善した例はありますか?
坂崎:公開されているページで「3月号」と書いてあるリンクを開いてみたら、「2月号」のPDFが開いたという指摘を受けたことがあります。それを受けてすぐに作成課にページ修正を依頼しました。フィードバック機能は、市民の方から指摘された掲載情報の間違いに、即座に修正対応できるという効果があります。
アライド:簡単に修正できる間違いであっても、市政情報課さんでは修正せず、ページを作成した課にフィードバックすることによって、各課職員の方の意識やスキルも高まりますね。
桑原:今年は桜の開花状況を3月末くらいから載せ始めたのですが、一番多かった意見は情報の更新が遅いというものでした。文字だけでは貧相な記事になってしまうので写真を載せようとすると、市内の10箇所くらいで写真を撮って画像をアップロードしなければならないため作業は結構大変で、リアルタイムというわけにはいきません。こちらとしては頻繁に更新しているつもりなのですが、市民の方からは「もっと早く」「もっとリアルタイムで分からないのか」といった厳しい意見が来ます。さらに、最初は開花状況だけ載せていたのですが、「交通案内はなぜ載っていないのか」という意見も来て、公園のページへのリンクを追加したりしました。中には「このような情報があって非常に参考になった」という意見もあり、情報を充実させてよかったなと思いました。
坂崎:桜の件では、掲載内容が市民の方に誤解を与えていたということも分かりました。桜の各写真の横に、写真の撮影日を載せていました。それとは別に、ページの一番上にこの内容はいつ時点の情報かという記事の日付も載せていたのですが、目立たなかったので、その内容は写真の撮影日時点の情報であると誤解されて伝わっていたようでした。そこで、一番上の記事の日付の文字を強調しました。市民の方からのコメントは、小さな改善のヒントになりますね。
桑原:市政情報課が行なう審査の際に気付けば良いのですが、どうしても気付かない時もあるので、市民の方からのコメントがあると、小さな改善を積み重ねていく事ができます。
アライド:フィードバック機能は、市と市民との双方向の第一歩になりますね。