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大妻女子大学 金城ゼミインタビュー

第3回:大学生から地方自治体ウェブサイトへの3つの提言

前回に引き続き、大妻女子大学・社会情報学部・社会情報処理学専攻の金城光(きんじょうひかり)先生と、「地方自治体のWebアクセシビリティ~インターネット利用状況調査とサイト実証研究から探る~」と題する卒論を書かれ、3月に卒業された船井絵理さんへのインタビューをご紹介します。

地方自治体のウェブサイトの在り方:3つの提言

アンケート調査とサイト実証実験の結果を踏まえ、船井さんは地方自治体のウェブサイトの在り方について、次の3つの提言をしています。

  1. 情報弱者である高齢者や障害者へ配慮されるように公共機関としてウェブアクセシビリティを意識したサイト作りをする。
  2. わかりやすい言葉で情報を見つけやすくする。特にSEO(検索エンジン)の検索結果で上位表示されるものを工夫する。
  3. 行政だけではなく、市民の身近なニーズをコンテンツに取り入れる。

アライド:卒論としてまとめていく時に、どういうことを最終的に知りたかったのでしょうか。その結果、想定どおりだったのか、違ったのかも教えてください。

船井:地方自治体ウェブサイトのアクセシビリティということについて、一般のユーザーがどう思っているかを聞いて分析し、提言するということを目的にしました。結果は大きく2つになると思っていましたが、3つになってしまいました。3つ目というのは、市民や企業も協力して魅力あるコンテンツを取り入れるということです。自治体のサイトは情報が載っているけれど、魅力が伝わっていないところがあると思います。例えば、アンケートをした時に、クーポンがあればいいなという声がありました。観光情報にクーポンを取り入れるなどすれば、観光情報を見る人も増えると思うので、そういったことを提言しました。あとの2つは高齢者や障害者を含めてウェブサイトとして必要な対応は、自治体のサイトとしてきちんとやるべきであること、検索エンジンなどニーズに合わせて見つけやすさを工夫するということです。

自治体サイトに言いたいこと

アライド:自治体や、自治体のサイト担当者に向けて、こういう風にした方がいいのではないか、こういう取り組みをして欲しい、などのご意見がありましたらお願いします。

船井:私自身ホームページを作成して思ったことですが、自分だけが使いやすい方向に行ってしまったり、自分が使いやすければ皆も使いやすいのだと錯覚してしまったりすることがあります。自治体では部ごとにページを作っていることがあると思いますが、違う部のものを見て評価しあうことで色々なアイディアも出てくると思うので、部ごとではなく全体としてサイトを良くしていくための交流があるといいと思います。

アライド:縦割りに、部署単位だけで見るのではなく、他部署の人とも情報交換をしてはどうか、ということですね。金城先生からはいかがですか。

金城:彼女の研究を通して思ったのが、ウェブ上の情報と広報紙とのリンクがあまりない気がしました。それらが相互作用できるようになれば、広報紙の読者もウェブの読者も増えると思います。

アライド:そうですね。今回携帯電話のサイトはご覧になりましたか。

船井:サイト実証実験の対象とした自治体の携帯サイトは見ました。利用はできるな、という程度で、不満はないのですが、詳しく見るといったところまではいっていません。

アライド:積極的に使おうというものにはなっていないということですね。


第2回:大学生が指摘する地方自治体サイトの問題点とは

前回に引き続き、大妻女子大学・社会情報学部・社会情報処理学専攻の金城光(きんじょうひかり)先生と、卒論で地方自治体のウェブアクセシビリティを研究された4年生の船井絵理さんへのインタビューをご紹介します。大学生の目から見た地方自治体サイトのアクセシビリティはどうだったのでしょうか。

研究目的

船井さんは卒業論文「地方自治体のWebアクセシビリティ ~インターネット利用状況調査とサイト実証実験から探る~」で、ウェブアクセシビリティの視点から地方自治体のウェブサイトの問題点を明らかにし、改善点を探ることを目的として、アンケートとサイト実証実験を実施されました。

アンケートでは、学生さん131名を対象に、インターネット全般の利用状況とウェブアクセシビリティの認知度を把握した上で、地方自治体のウェブに対する信頼度、地方自治体のウェブサイトの利用率を明らかにしました。

図1 インターネット利用時に使いづらいと感じること(図1の説明
図1のグラフ

インターネット利用時に使いづらいと感じることは、図1のように、「必要な情報にたどり着きにくい」「サイトの中で迷いやすい」「トップページのメニューから情報が探しにくい」など、サイト構造上の問題が上位にあがりました。

「ウェブアクセシビリティ」という用語の意味を知っている人は2割以下とのこと。地方自治体のサイトを利用したことがある人は都道府県で13%、市町村では15%と少数であり、利用しない理由は、サイトの存在を知らなかった、欲しい情報がないなどでした。

様々なメディアから提供される情報の信頼度について聞いたところ、地方自治体については「窓口」「区報・市報・広報誌」「ウェブサイト」の順となりました。窓口の信頼度が高いことについて、船井さんは「行政の手続き等を行うとき、窓口の人を通して行うことが多く身近に感じているからではないか」と考察しています。

調査を進めるにあたって

アライド:アンケート調査を進めるにあたって工夫した事や困った事はありましたか。

船井:インターネットの使いづらい点をアンケートでどう聞くか困りました。友達に聞いても、インターネットを使っている途中で利用できなかった場合、見切りをつけて使うのをやめてしまうので、具体的に思い出せるという人がなかなかいませんでした。

アライド:そこはどう工夫されましたか。

船井:最初に、利用時に使いづらいと考えられる選択肢をこちらからたくさん用意しておいて、当てはまるものを選びながら思い出してもらって、その後具体的に使いづらい点を記入してもらいました。

アライド:素晴らしいですね。弊社でコンサルタントとして活躍してもらえそうです。金城先生のゼミでは、アンケートの作り方についてのご指導もされているのですか?

金城

アンケートは対外的なものなので作成の指導やチェックもします。しかし、基本的には自分で選んだテーマに対して責任を持って取り組んでもらうという方針です。相談はありましたが、彼女自身で自主的に進めていきました。

アライド:アンケートの他に「サイト実証実験」にも取り組まれたそうですが、どのように行われたのですか。

船井:インターネットで見つけた「ユーザビリティに注目した自治体ウェブサイトの評価に関する一考察(PDF)」という研究を参考に、自分でアレンジして、ユーザーが実際にサイトを操作している様子をビデオで撮影する手法をとりました。大学生から高齢者まで4名のユーザーに手続きや申請の仕方についての質問をし、サイト内から情報を見つけもらって、情報の探しやすさなどを評価してもらいました。

サイト実証実験から明らかになった5つの問題点とは

船井さんのサイト実証実験の結果、5つの問題点が明らかになりました。

1.トップページのメニューから情報が探しにくい

  • あるメニューをクリックしてみたところ、メニュー名から想像していたコンテンツがない。
  • トップページに配置されているメニューの数が多すぎて、選ぶのが大変。
  • 似たような名前のメニューが複数あり、どれを選んだら良いかわからない。

2.サイトの中で迷いやすい

  • リンクをたどっているうちに、どのコーナーの情報を表示しているのか分からなくなる。
  • 自分が探している情報と関係のない情報がたくさん出てきてイライラする。
  • 少し前に見ていたページに戻ろうと思っても、どこにあるのか分からない。

3.なかなか情報にたどり着けない

  • 頻繁に使う情報なのに、何回もクリックしないと表示できない。
  • 個別のコーナーのメニューページで、たくさんのリンクが出てきて、その中から選ぶのに時間がかかる。
  • ページ内の情報の配置が不規則で、どの場所に何があるのかすぐに分からない。

4.情報にたどり着いても情報内容や、情報量に満足できない

  • ユーザーが期待した情報内容や、情報量のニーズに十分に応えていない。情報内容、情報量のミスマッチ

5.全体的にサイトの基本構成に不備(特に高齢者にとって)

  • そもそも探したいメニューが出てこない。
  • メニューの文言(用語)が分かりにくい。
  • 画面上でのメニューの位置(レイアウト)が分かりにくい。

第1回:大学生から見たウェブアクセシビリティ

認知心理学がご専門の大妻女子大学・社会情報学部・社会情報処理学専攻 金城光(きんじょうひかり)先生のゼミでは、2年前から学生さんと一緒にウェブアクセシビリティの研究をされているそうです。

2月25日、アライド・ブレインズに金城先生と、地方自治体のウェブアクセシビリティをテーマに卒業論文を書かれた4年生の船井絵理さんにお越しいただき、お話をうかがいました。学生さんの目から見たウェブアクセシビリティとは、地方自治体サイトの問題点とは・・・?

お二人へのインタビューの模様を、船井さんの卒論の結果を織り交ぜながら、3回に分けてご紹介します。

ゼミの研究テーマはウェブアクセシビリティ

アライド:はじめに、金城先生のご専門やゼミについてご紹介いただけますか。

金城:私は認知心理学を専門としています。認知心理学というのは心理学の中でも人が外からの情報をいかに五感で受け入れ、それを処理して自分の行動に結び付けていくかについて研究する学問です。その中で現在では特に記憶を研究しており、高齢者の記憶や認知機能の研究もしています。

アライド:認知心理学というのは一般社会の中でどのようなところに関係がある学問なのでしょうか。

金城:人間の認知とは私たちが常に行っている行動そのものです。これまでの知識や経験を元に、現在置かれている自分の状況をモニタリングし、その次の行動を制御していくような働きと考えて下さい。例えばアライド・ブレインズへうかがうとすると、「自分は方向音痴だから」と地図を用意し、神保町の駅に着いたら、交差点や建物の位置を確認しながら地図を見て自分の位置を認識し、地図の情報をもとに、何を目標にどちらの方向へ向かっていけばいいかと整理するような機能です。

アライド:難しそうですね。

金城:そんなことはありません。例えば勉強する時に、いかに効率よく勉強しなければならないか、テストがあるとしたら教科書を自分がどれだけ覚えていて、テストの日までにどこまでをどれだけ覚えなければならないかと計画を立てて、自分の目標が達成するように行動に結び付けていくというのが認知というものです。

アライド:ウェブアクセシビリティについては、金城先生の授業で取り上げられたのですか。

金城:社会情報学部というのは、氾濫している情報の中から適切な情報を見つけ出し、それを目的に合わせて編集、加工して発信する技術や知識を勉強する学部なのですが、実際に情報がユーザーにどう役立っているか、どう困っているかというところまではなかなかいかないのです。例えばウェブに関してもウェブデザインという授業がありますが、実際のユーザーが何に困っていてどうしたいのか、というようなところが非常に欠けているような気がしていました。そこで、ゼミ生皆で勉強するテーマとしてウェブアクセシビリティを選びました。

アライド:いつから始められたのですか?

金城:2年前位です。いい教科書が欲しくて探してみたところ、まとまった形で読めるのがアライド・ブレインズの方が書かれた「WebアクセシビリティJIS規格完全ガイド」でした。今3年生がみんな楽しくこの本を利用しています。自分たちだけ使えればよいのではなくて、いかに多くの人が情報を共有できるかという、今まで知らなかった視点に立ったホームページ作りやシステム作りが見えるような気がして、好評です。

アクセシビリティに興味を持ったきっかけは

アライド:船井さんは、卒業論文で自治体のウェブアクセシビリティを研究されたそうですが、アクセシビリティに興味を持たれたきっかけは何でしたか。

船井:大学三年生の時に「学生が作る中小企業ホームページグランプリ多摩」に友達と一緒に応募し、食品卸業者のホームページを作りました。その時に心がけたことが、デザインを消費者の立場に立って分かりやすく作るということでした。ウェブアクセシビリティに興味を持ったのは、ユーザーの立場に立って考えることが重要であることが少しわかったからだと思います。

アライド:コンテストの結果はいかがでしたか?

船井:結果は惨敗でした。その後にゼミでウェブアクセシビリティについてきちんと学んだところ、自分が考えていたウェブアクセシビリティは少し違っていたということが分かり、さらに興味が湧いてきました。例えば、地方自治体サイトで音声読み上げソフトが提供されていると、アクセシビリティについて先進的な自治体なのだと思っていました。しかし、弱視の方や全盲の方は、自分が普段使用しているソフトをパソコンの中に持っているので、サイトで提供されている音声読み上げソフトはあまり必要ではないことを知りました。それでは、利用者から求められているアクセシビリティとはどのようなものなのか、と興味を持ちました。

アライド:そういうことに気付くのはすごいことですね。自治体の人でも音声読み上げソフトをサイトで提供していると先進的だと思っている人が非常に多いです。
アクセシビリティについてあまり基礎的な知識がなかった時と、実は勉強したらこういうものだったな、ということで一番大きな違いは何でしたか?

船井:ウェブアクセシビリティに配慮するには、ホームページを作る側が責任を持って作らなければならないという点に気づいたことが大きく違います。学ぶ前までは「ウェブアクセシビリティをやってあげていればいいんだ」という意識で、ユーザーに対してそこまで親身にはなっていなかったです。

アライド:勉強する前は、自分中心の解釈だったということですか。

船井:そうですね。「こういうテキストにしよう」「ここにalt属性をつけてあげよう」と、自分だけの視点でウェブアクセシビリティを決めていたのですが、本当のウェブアクセシビリティというのは障害者や高齢者の方など全ての人を含めて必要となるものなので、ユーザーの立場になって考えて作るという点で大きく違っていたなと分かりました。

アライド:素晴らしいですね。A.A.O.セミナーで講演していただきたいくらいすばらしい発見だと思います。


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