スマートフォン・タブレットの可能性 iPadは弱視者の生活を変えられるか?
第2回:iPadによって私の日常生活はどう変わったか?
[ 2012年10月1日 ]
外出先でお店を探せるようになった
iPadを使っていくにつれて、「今まで弱視者が不便に感じていた日常生活のさまざまなことが、iPadの登場によって改善できるのではないか」と考えています。もっとも代表的なのは、「外出」と「読書」です。
私は、駅の電光掲示板やお店の看板を裸眼で見ることはできません。また、携帯電話では画面が小さいため地図などはよく見えません。そのため、これまで私は外出する際、あらかじめ自宅のパソコンで最寄駅から目的地までの地図を見て道順を覚えたり、地図を印刷して持ち歩いたりしていました。それが、iPadのマップアプリを使うことによって、大きな画面で目的地までの道順を確認しながら歩くことができるようになりました。
また外出先で喫茶店や郵便局、銀行、コンビニエンスストアなどを探すときも、これまでは近くにいる人に教えてもらったり、自分で歩き回って探したりしていましたが、iPadを使うと、現在地周辺の地図を画面で見ながらお店を探すことができます。先日も、電車で新宿に向かう途中、iPadで新宿郵便局の場所を探し、スムーズに行くことができました。
駅やお店の看板を見られるようになった
前述したとおり、私は、駅の電光掲示板やお店の看板を裸眼で見ることはできません。そのため、電車の乗り換えのときやトイレに行きたくなった時、あるいは目的地がここで合っているのか確認したいときなどに不便を感じていました。そこで、iPadのカメラを使って電光掲示板や看板を拡大して撮影し、それをゆっくり見て確認するという使い方を考えました。
図4:新宿駅の電光掲示板
図4は、新宿駅の電光掲示板をiPadで拡大して撮影したものです。こうして撮影した写真を、前述のズーム機能を使ってゆっくり見ることで、改札口や電車の行先などを確認することができます。この使い方を思いついてから、外出時に迷子になることがぐんと減りました。
気軽に本を読めるようになった
私はこれまで本を読む際、机の前に座り、拡大読書器を使って読んでいました。拡大読書器とは、書見台の上に置いた書類や本が、上部のテレビモニターに拡大表示されるというものです。しかしどうも仕事をしているような気分になってしまって、小説やエッセイといった本をリラックスして読むことがなかなかできませんでした。
図5:拡大読書器
そこでiPadの登場です。iPadにはさまざまな電子書籍アプリをインストールすることができます。ご紹介したズーム機能や「黒地に白」機能を使って電子書籍アプリを使うことによって、これまでよりも手軽に、そして気軽に本の世界を楽しめるようになりました。
また、電子書籍アプリの中には、文字の大きさやフォント、文字色と背景色の組み合わせ、縦書き/横書きなどを設定して、自分が一番読みやすい環境で読書を楽しめるようになっているものもあります。iPadを使うようになってから、私は小説や文学作品、図鑑などを楽しめるようになりました。
このようにiPadを使うことによって、これまでできなかったことができるようになったり、不便さが解消されたり、私の日常生活は確実に変化しています。そしてこれからも便利な使い方を編み出したり、素敵なアプリを見つけたりすることによって、私の世界そのものが広がっていくでしょう。
次回のコラムでは、自治体ウェブサイトにおけるスマートフォン・タブレット対応についてお話しします。