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求められる電子政府・電子自治体のユーザビリティ向上
第1回 電子政府ユーザビリティガイドラインが目指すもの

[ 2009年8月14日 ]

寄稿
内閣官房情報通信技術(IT)担当室



1.ガイドライン策定の背景

「e-Japan戦略」(平成13年1月22日IT戦略本部決定)により推進されてきた電子政府の取組は、「IT新改革戦略」(平成18年1月19日IT戦略本部決定)において、「世界一便利で効率的な電子行政」を目指して実施されてきました。しかし、「利用者・生活者重視」の視点が不十分でした。

そのため、「オンライン利用拡大行動計画」(平成20年9月12日IT戦略本部決定)では、オンライン申請の利用率拡大に向けて、使い勝手の向上の措置を集中的に講ずることが方策の一つとして掲げられました。同計画に基づき、電子政府の手続に応じたユーザビリティ向上方策等について、政府横断的なガイドラインを策定することに向け、関係府省の協力を得て、内閣官房情報通信技術(IT)担当室において有識者を含めた「電子政府ガイドライン作成検討会」が設けられました。

本年7月、上記検討会において検討された「電子政府ユーザビリティガイドライン」(以下、本ガイドライン)が、各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議で正式に決定されました。
以下に、本ガイドラインの特徴と今後の展開について述べます。

文末の参考情報へのリンクをご参照ください

2.本ガイドラインの目的と特徴

本ガイドラインは、各府省が提供するオンライン申請システムについて、ユーザビリティの効果的かつ継続的な向上を図るため、オンライン申請システムの新規開発及び改修における企画、設計・開発、運用及び評価の各段階で利用するために策定されました。

特徴として、利用者用の画面の色やボタンの位置など、具体的なデザイン仕様を定めたガイドラインではなく、企画、設計・開発、運用及び評価の段階でユーザビリティ向上のために実施すべき事柄を示した「プロセスガイドライン」であることが挙げられます。

この企画、設計・開発、運用及び評価の段階で実施すべき取組として本ガイドラインで示すユーザビリティ向上プロセスには、大きく以下4つの局面があります(図1)。

  1. ユーザビリティ向上の基本方針と目標の設定
  2. 利用者特性と業務の把握・検討
  3. ユーザビリティ向上を実現するための技術検討
  4. ユーザインタフェースの検討

図1 ユーザビリティ向上プロセスの4つの局面と構造(図1の説明
図1

本ガイドラインに基づいて1、2を実施することにより、業務全体の見直し(BPR)につながる改善策が立案されます。3の実施の前に、2の局面で業務全体の見直しを行うことが極めて重要です。

4については、本ガイドラインでは、各府省が共通的にオンライン申請システムの設計に取り入れる必要がある事項を共通設計指針(表1)として示しており、ユーザインタフェースの検討に当たっては、これを基本として各手続の特性を踏まえ、個別に検討することとしています。

表1 共通設計指針
利用手順 1.利用者が想定する流れに沿った手順にする
2.業務プロセス及び申請書等の様式の見直しにより、最小限の操作、入力で申請等ができるようにする
画面の構成 3.見てすぐ何をすればよいかが分かるような画面や手順にする
4.無駄な情報、デザイン、機能を排し、シンプルで分かりやすい画面にする
指示や状態のわかりやすさ 5.操作の指示や説明、メニュー等には、利用者が正しく理解できる用語を使用する
6.基本的な用語、指示、デザインには一貫性を持たせる
7.手続を行っている時に、システムが処理している内容を利用者がすぐ分かるようにする
エラーの防止と処理 8.利用者が操作や入力を間違えないデザインや案内を提供する
9.確認画面を用意し、利用者が行った操作や入力の取り消し、やり直しが、その都度できるようにする
10.エラーが発生した時には、利用者が迷わずに問題の解決をできるように、必要な情報と手段を提供する
ヘルプ 11.利用者が必要とする時に、ヘルプ情報やマニュアル等を利用できるようにする
その他 12.情報提供については、言葉遣い、メニューの分類・順番や必要な情報の有無に配慮し、必要な情報が容易に理解できるようにする
13.障害者や高齢者に配慮し、日本工業規格JIS X 8341シリーズ、ISO/IECガイド71、「みんなの公共サイト運用モデル(総務省)」に準拠した設計を行う

3.ガイドラインが想定するユーザビリティ向上のプロセス

(1)企画段階

図2は、企画段階において各府省が実施すべき取組の流れを示したものです。企画段階では、想定利用者層に対するアンケート、インタビューや、現状システムのユーザビリティテストを実施することにより、想定利用者層の特性や現状の問題点を把握した上で、利用品質目標を含めたユーザビリティ向上計画を作成・公表することとしています。

図2 企画段階において各府省が実施すべき取組の流れ(図2の説明
図2

(2)設計・開発段階

設計・開発段階では、各府省の担当者は、要件定義書に示したユーザビリティに係る要件に沿った開発が行われているか、設計・開発事業者に対して確認・管理を行うことが求められます。

図3 設計・開発段階において各府省が実施すべき取組の流れ(図3の説明
図3

(3)運用段階

運用段階では、利用者講習会の実施やヘルプデスクの設置を行う際に、同時にユーザの意見や要望を収集することとしています。
また、ユーザビリティ向上計画で掲げた利用品質目標について、アンケート等の方法によりデータの収集・測定を行います。

(4)ユーザビリティ向上計画に基づく評価

システムの新規開発または改修を終えた後、ユーザビリティ向上計画で示した工程表に合わせ、ユーザビリティ向上計画に掲げた目標の進捗状況や課題について評価を行うこととしています。

4.今後の取り組みと展開

本ガイドラインは、オンライン利用拡大行動計画において定めた重点手続(71手続)を取り扱う、政府のオンライン申請システムにおける申請者(利用者)側の機能を対象としています。対象機能としては、オンライン申請の画面だけでなく、オンライン申請のための情報提供やシステムを利用してもらうための事前準備(利用者登録、登録情報変更、ログイン手順等)も含まれます。

今後の展開として、まずは平成22年度中頃を目途に、府省ごとに想定利用者層の特性調査等を実施した上で、ユーザビリティ向上計画が公表されることになります。

本ガイドラインについては、今後当分の間、内容の拡充等を目的として、毎年見直しを行うこととしています。例えば、対象範囲の拡大(オンライン申請等のための情報提供に加え、ホームページによる一般的な情報提供も対象とするなど)等をテーマに検討を行う予定です。

最後に、地方自治体や独立行政法人、国立大学法人、その他公的な活動を行う民間法人等におかれましても、本ガイドラインの対象範囲に直接該当してはいませんが、本ガイドラインを参考にしてユーザビリティの向上を図る動きが拡がれば、今回の政府の取組は、利用者に対するサービス向上として、より大きな意義を持つものになると期待しております。

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