連載「JIS X 8341-3改正動向と公共機関HPに必要な対応」
第9回「ウェブアクセシビリティJIS規格改正動向」
[ 2025年6月4日 ]
執筆担当
大谷 昌也
(おおたに まさや)
総務省『みんなの公共サイト運用ガイドライン(2024年版)』に記載の通り、ウェブアクセシビリティの日本産業規格JIS X 8341-3が近々改正される見通しです。新しく広報担当になった方は、今年度行うべきJIS改正への対応を確認しましょう。
JIS改正動向(2025年5月時点)
ウェブ技術の標準化を行う団体であるW3Cが2024年10月にウェブアクセシビリティの最新国際基準である「Web Content Accessibility Guidelines 2.2」(以降WCAG2.2と記載する)をISOに提出し、ISO更新の手順が進行しています。
公共機関のウェブアクセシビリティ推進を所管している総務省は、「みんなの公共サイト運用ガイドライン」を2024年5月に改訂し、JIS改正がWCAG2.2の基準を採用する形で行われる見通しであることを示した上で、速やかな取組開始を求めました。
また、JIS規格の改正原案作成団体のウェブアクセシビリティ基盤委員会はすでにWCAG2.2の日本語訳を公開しており、皆さんも内容を確認できる状態です。
現時点のISO更新見通しを踏まえると、JISは2026年度に改正される可能性が高くなっています。なお、手続きの進行具合によっては前後する場合があります。
改正により達成基準が、現行のJIS規格の1.4倍に
WCAG2.2は、現行JIS規格の一致規格であるWCAG2.0に多数の達成基準(アクセシビリティ対応のルール)が追加されています。主には、スマートフォン等のモバイル端末やタッチパネル端末、学習障害、認知障害者等に必要な基準が追加されており、ボリュームとしては「1.44倍」のボリュームアップとなります。
適合レベル/達成基準 | JIS X 8341-3:2016 | WCAG 2.2 |
---|---|---|
レベルA | 25 | 31 |
レベルAA | 13 | 24 |
レベルAAA | 23 | 31 |
計 | 61 | 86 |
まずは総務省ガイドライン(2024年版)を確認しましょう
「みんなの公共サイト運用ガイドライン(2024年版)」では、以下の3点が重要なメッセージとして発信されています。取組に着手できているか確認してください。
1. 現行JISに問題がない状態にする
総務省の全国調査により、多くの公的機関ホームページで、現行JISの基準で問題が残っていることが、確認されています。追加基準に取り組む以前の課題として、現行JISへの確実な対応を速やかに実行しなければなりません。
[関連コラム] 第8回「総務省JIS対応状況調査とは?」
2. JIS改正に向けて、新基準への対応を推進する
JISの改正を待たずに、今からWCAG2.2基準で問題がないかを確認し改善を進行することが求められています。特にHPのリニューアルを予定している団体は、調達準備やそれ以前の計画検討の段階から、WCAG2.2への対応を取り入れて構築時に入念に検証しなければ、公開後に大きな手戻りが発生する恐れがあります。
3. 誤った取組を是正する
総務省ガイドライン(p.39)は誤った取組を具体的に例示し是正を求めています。必ず内容を確認し、適切でない点がある場合は、速やかに対応を見直しましょう。
[関連コラム] 第6回「総務省より、不適切な取組の是正依頼文書発出」
最後に
本コラムをお読みの皆様は、まず総務省「JIS対応状況調査」の結果を確認し、ホームページ全体の現状を把握することから始めてください。国、独法、町村等は2024年3月に、都道府県、市、特別区は2025年2月に調査結果が郵送で示されています。
アライド・ブレインズでは、調査結果の活用方法等を含め、総務省「みんなの公共サイト運用ガイドライン」に基づくアクセシビリティ対応、JIS改正の最新動向について、本連載コラムや、下記セミナーで解説予定です。是非ご活用ください。
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