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わたしとWebとパソコンと
No.2 肢体障害者の施設の中で(前編)

[ 2007年11月26日 ]

岩渕正樹さんの写真 インタビュアー
岩渕正樹さん
(いわぶち まさき)

吉田有紀子さんの写真清水正男さん
(しみず まさお)



清水正男さんは、食事は介助、移動は電動車いすの肢体障害者です。首から下が動かせないので、当然マウスは使えません。でも、パソコンを使っています。頭に付けた棒の先でパソコンを操作しています。そんな清水さんと初めて出会ったのは、坂戸パソコンボランティアが正式にスタートする前の1998年9月ですので、足かけ10年の付き合いです。事故で障害者となった清水さんの生活の移り変わり、パソコンとの出会い、メーカーやウェブに望むことなど、あらためて聞いてみました。

ある日突然

岩渕:お久しぶり。今年の夏は暑かったですね。

清水:そうですね。暑かったですね。体温調整ができないので参りました。

岩渕:障害者になってからそうなったんですよね。障害をもつ前は、どんな生活だったんでしょうか。

清水:子どもの頃から身体を動かすことが好きだったので、学生時代はラグビーや色んなスポーツをしていました。

岩渕:趣味のほうはどうでしたか?

清水:趣味ですか。けっこう色んな遊びをしましたよ。遊び仲間がいたから冬はスキーをやったり、春から夏場にかけては釣りに出かけたり、クルーザーを仲間で買って東京湾から千葉の海、三浦半島と行ったものです。船の免許も取りました。モーターボートも買ったので、山中湖や猪苗代湖で水上スキーをしたりしました。車も好きでジープを持っていたので、トレーナーでモーターボートを引っ張って出かけました。お金は全部、趣味につぎ込んでいたので、いつもピーピーしてました (笑)

ヘッドポインターを付けた清水さん

岩渕:そんな清水さんが、「障害者」になったのはスキーの事故だったと聞きましたが…。

清水:スキーもあっちこっち行きましたよ。水上に草津に黒姫に妙高に。苗場も行きましたが、あそこは高くて混んでいるので、どんどん滑れる空いているスキー場を狙って行ってました。

岩渕:私が一番好きなスキー場は宝台樹なんですが、行ったことありますか?

清水:あそこで怪我したんですよ。奧利根国際スキー場には高校のときから行ってましたが、宝台樹はぜんぜん知らなくて、友達に電話したら知り合いが指導員をしていると聞いて、みんなで行くことにしたんです。成人の日だったですね。

絵とパソコンのコーナーの写真

岩渕:成人の日だと、超穴場の宝台樹でも混んでたでしょう?

清水:宝台樹の中でも空いているゲレンデが下のほうにあって…

岩渕:広いけど、けっこう厳しい中上級者向けのゲレンデですよね。

清水:リフト近くで止まった瞬間、後ろから追突され、相手の身体が首を直撃しました。起き上がろうとしたんですが、手足が全く動かなくなり、そのときから障害者になりました。

岩渕:えっ、あのゲレンデだったんですか。私がオープン2年目から通っていたゲレンデで清水さんが事故にあっていたなんてビックリしました。その事故で清水さんの身体はどのようになったのでしょうか。このインタビューで初めて知る人もいると思いますので、少し詳しくお教えください。


首の骨を骨折して

清水:首の骨を骨折しました。第3頚椎損傷で、体温調節もそうですが、それより何より肩から下の皮膚感覚がなくなって傷がついても分からない状態です。首から下の筋肉を動かす機能が全部ダメになりました。施設で暮らして20年になります。

岩渕:そうなると、食事をするにしても着替えをするにしても、誰かの介助が必要ですし、パソコンにしても、マウスを使ってチャチャッとはいきませんよね?

清水:自分で動かせる機能はほとんどないので、首と口という残っている機能を使って何かをしたい気持ちが生まれました。障害者になって4~5年経ってからですけどね。

岩渕:その障害は、清水さんが抱いてきた趣味や夢、生きがいや生活にどういった影響を及ぼしましたか?

清水:いやー、だいぶ変わっちゃったねー。ホントに。もう恥かしい話だけど、その年の6月頃に結婚する予定になっていたのに、天と地が引っくり返ってしまったわけで、みんなにも悪いことをしました。

口にくわえた筆で描いている写真

岩渕:趣味や夢、生きがいどころじゃなかったわけですね。

清水:それどころじゃなくて、生きるか死ぬかの状態が1年くらい続きました。

岩渕:清水さんは「口筆画」を掲げているわけですが、昔から絵を描いてたんですか?

清水:描いてないです。

岩渕:ということは、きっかけは?

自分を励ましながら

清水:リハビリ病棟だったので、残された機能を少しでも使って家族や友だちと交流ができるのではと看護婦さんに勧められ、最初は字を書くところから始まりました。下手な字でも手紙を出せるようになりました。その入院先にお見舞いにきた兄から、星野富弘さんの詩画集を見せてもらい、こういう人がいるんだ! 一生懸命生きている人がいるんだ!と思ったのがきっかけです。

岩渕:「字を書くところ」から始まったのは、星野さんも同じみたいですね。

清水曼珠沙華の書その後、オープンしたばかりの現在の施設に入所して、日常活動のひとつとして色々なクラブを作ることになって、自分たちにできるものには何があるだろうかと施設で暮らし始めたみんなと話し合い、自分でも絵がかけたらなぁ、絵を描くことで何か自分をあらわせたらなぁ、星野さんに少しでも近づけたらなぁと、絵画クラブを創立しました。自分をお終いにしたくなかったし、星野さんの障害より少し状態が良かったので、できないはずがない!と自分を励ましながら描いたものです。

岩渕:書道もしてますよね?

清水:筆を口でくわえて描くなら絵画も書道も一緒だと、書道クラブも始めました (笑)

岩渕:どんな風に書いているんですか?

清水:絵とおんなじで、筆を口にくわえて一気に書きます。長くくわえてられないので。

岩渕:あの字の勢いは、だからなんですね! 絵を描き書道もしている清水さんがパソコンを使いたいと思った気持ちの中には、パソコンによる何らかの展開を期待して…があったのでしょうか?

パソコンの時代と聞いて

清水施設の新聞最初はワープロを使って施設の新聞や文化祭や納涼祭のポスターを作っていたんですが、もうワープロが無くなる、パソコンの時代になると聞いて…。今までやっていた施設での頼まれごとや手紙を書いたりすることを継続したかったんです。
それと、絵の整理とか管理、インターネットやメールをやるとか、自分の趣味と関連付けたホームページを開きたかったので、パソコンを始めたいと思いました。絵やホームページで収入が得られたら自立して施設から出られるかもしれないとも思いました。

外との交流も少ないので、友だちを増やしたり、今までの友だちとの連絡を取り合ったりするのに便利かなと思いました。電話をかけるにしても自分だけではできないので、メールだったら自分だけでできるかなぁと思いました。
そのあたりをパソボラの人に聞いてみたら自分にもできると言われ、サポートもしてくれると言われたので、パソコンの購入からその後のサポートまで全て助けてもらっています。パソボラがいなかったら何もできなかったですね。

岩渕:実は、坂戸パソボラとしても、清水さんたちがサポート依頼の第1号だったんですよ。というか、清水さんたちのサポート依頼があったことで、“障害者へのパソコンサポートをするパソボラ”がそのとき集まっていた人たちに実感できたんじゃないかと思います。坂戸パソボラの正式発足は、清水さんたちへのサポートを始めて4ヵ月後ですから。
さて、清水さんは色々なホームページを見ることができるようになったわけですが、普段どのようなウェブサイトを利用していますか?

買い物に調べものに

清水:人によって絵の描きかたが違うじゃないですか。普段は、色んな絵のサイトを見たりして参考にしています。あとは、障害者のことについての調べ物やインターネットで買い物をしています。外出するときの下調べもしています。テレビを見ていて気になったことや分からないことを調べたりもしてますね。

岩渕:どんなものを買いましたか?

清水:最初は普通のカメラで、この間はデジカメを買いました。姪っ子へのプレゼントもインターネットで申し込んでそのまま配送の手配までできるので便利に使っています。

岩渕:パソコンが使えるようになったことで、また、ウェブを利用できるようになったことで、趣味や夢や生活が変わりましたか? 今までできなかったことができるようになった、あるいは、以前していたことがまたできるようになったということはありますか?

清水:趣味や夢でいうと、前より深くできるようになりました。

岩渕:深くというと?

人の手を煩わせないで

清水個展のポスター今までだと、ワープロでポスターを作っていましたが、パソコンになってからは自分の絵も取り込めるし、レイアウトをするにしても自分なりのものができるようになりました。ワープロを使って施設の新聞も作ってましたが、あの当時は文字のサイズにしても2倍角までで、大きな文字はコピーで拡大したものを貼ってもらっていました。

でもパソコンになってからは、大きな文字が自分のパソコンの中で自分で貼り付けられます。人に頼んで作るとなるとどうしても遠慮してしまいましたが、パソコンにしてからは自分の納得がいくものを作ることができるようになりました。
買い物にしても、人に頼まなくて済むようになったのが一番大きいかもしれません。

岩渕:ということは、パソコンを使えるようになる前やウェブを利用できるようになる前は、どうだったのでしょうか?

清水:外出するときでもあそこにエレベータがあるかとかスロープがあるかとか、人に聞いてたんですが、今では自分で調べておくことができます。何をするにしても、人の手を煩わせないでできるようになったのが一番ですね。

岩渕:パソコンを使い出したことで、ウェブを利用し出したことで、予想外だったことはありましたか?

清水:自分でできなかったことができるようになりました。使い始める前は予想していませんでした。

岩渕:具体的に言いますと?

清水:買い物とか、絵の資料を増やしたり、大勢の人と知り合ったり、知らない人とも知り合えるきっかけになりました。ホームページを見た人からドキュメンタリーを撮りたいとの思いがけない声がかかったりもしました。でも、絵に集中できなくなってしまいました (笑)
予想外といえば、パソコンの画像って修正しているせいかキレイすぎて、絵のサイトに飾ってある絵が面白味がないと感じたのは意外でした。本物とかけ離れていると感じてしまいます。自分のホームページに飾ってある絵は別ですが (笑)
パソコンを使っていると時間が過ぎるのが早かったのも予想外でした。それと、パソコンのトラブルが多かったのには参りました。


インタビューはまだまだ続きます。清水さんがパソコンやウェブとどう付き合っているか、使いにくさも含めてサイトへの要望、ケータイについてと、広がる話にご期待ください。

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