わたしとWebとパソコンと
No.4 視覚障害者の社会参加で(前編)
[ 2008年9月1日 ]
インタビュアー
岩渕正樹さん
(いわぶち まさき)
宇佐美昭治さん
(うさみ しょうじ)
宇佐美昭治さんには肩書きがあります。鶴ヶ島視覚障害者の会「アイネット」の会長です。
宇佐美さんと初めて出会ったのは、坂戸パソコンボランティアが開催した「視覚障害者のためのパソコン体験講座」でしたが、今回のインタビューでは、視覚障害者の社会参加とパソコンやウェブやケータイとの関わりを、代表をしている鶴ヶ島視覚障害者の会「アイネット」の歴史と重ね合わせながらお聞きしたいと思います。
盲学校で、全て活字で
岩渕:最初に、宇佐美さんから自己紹介をお願いします。とあらたまって聞かれると緊張しますか?(笑)
宇佐美:緊張します(笑)
岩渕:宇佐美さんは、地元では有名人ですから、こういったインタビューは慣れっこだと思っていましたが。
宇佐美:慣れっこじゃありません。口下手ですから苦手です。インタビューなんて初めてです。
岩渕:では、こちらもそのつもりで、ゆっくりいきたいと思います。
さて、宇佐美さんと初めて会ったときには、すでに見えなかったと思いますが、そもそも、どういうきっかけでの出会いだったか、覚えておいででしょうか。
宇佐美:確か、坂戸パソボラの例会だったと思いますが、あまり印象に残っていません。それから、川越の埼玉県立盲学校でやったパソコン体験講座への参加でした。
岩渕:私の記憶でもそうです。宇佐美さんは中途失明だったと聞いた覚えがあります。障害をもつ前は、どのような生活ぶりだったのでしょうか。
宇佐美:実はわたし、盲学校に行っていたんですが、点字の教育を受けていませんでした。すべて活字でやっていたのです。
岩渕:では、どうして盲学校に通っていたのでしょうか?
宇佐美:元々は、視野が狭いのと暗いところが見えない夜盲症だったので、将来に不安があったため盲学校に入ったのです。
盲学校、ここだけの話
岩渕:不安があって入ったのはわかりましたが、すると、盲学校では何をしていたのでしょうか?
宇佐美:あまり勉強してなかったですね。実は、人の免許を借りて高3から開業してしまいました。もうひとつ内緒話をすると、兄も同級生なんですよ。兄は高校1年生を3回、2年生を2回、3年生を2回しているうちに追いついてしまいました。
岩渕:大変な内緒話、ここだけの秘密ということで(笑)
宇佐美:はい。それは秘密ということで (笑)。盲学校には、マッサージ・針灸の勉強をしに入ったのです。
岩渕:勉強の甲斐あって、早くも開業(笑)
宇佐美:(笑)。盲学校なら、私は見えるほうになりましたので、とても活動的になりました。
実際、盲学校には入りましたが、視力は0.2から0.3ありました。新聞の字も十分に読める視力でしたので、点字の勉強をする必要がなかったのです。
岩渕:そのあたりが、宇佐美さんが「実は点字は苦手です」と語っている裏の事情だったのですね。ようやく分かりました (笑)
開業してから、ずっと自宅で働いていたのですか?
宇佐美:開業していたのは卒業するまでで、卒業してからすぐ病院勤めに入りました。定年まで、ずっと病院に勤めていたのです。
ボートにスケート、飲み歩き
岩渕:なるほど。模範社員の傍ら、模範社員以外では、どんな趣味や夢、生きがいなどを持っていたのでしょうか?
宇佐美:ボートに行ったりスケートに行ったり飲み歩いたりしていました。歌声喫茶にも行っていました。
岩渕:宇佐美さんと初めてお会いしたときの記憶では、朗読テープをデイジー図書にする依頼があって、そのときの本が「東京周辺の山」だったと思いますが、山登りも趣味だったのではないでしょうか?
宇佐美:山登りは、全く見えなくなった50代になってからです。
岩渕:あの本は、私も山歩きの参考にしていたので、その本の依頼というだけで、宇佐美さんに親近感をいだいた記憶があります。今だからこその制作秘話です(笑)