大妻女子大学 金城ゼミインタビュー
第1回:大学生から見たウェブアクセシビリティ
[ 2009年3月23日 ]
地方自治体サイトの取り組みは進んでいるか
アライド:卒論の話を聞かせていただきたいのですが、特に地方自治体に絞って卒論のテーマにしてみようと思われたきっかけはあったのでしょうか?
船井:学んでいるうちに、ウェブアクセシビリティについて絶対に卒論で取り上げたいという気持ちになりました。地方自治体に絞ったのは、地方自治体は社会的影響力が一番大きいと考え、リーダーシップをとってどんどんウェブアクセシビリティを進めていくべき存在だと思ったからです。
アライド:アクセシビリティを世の中に広げていくには、地方自治体がもっと率先して対応すべきではないかということですか。
船井:公共機関なので、アクセシビリティの取り組みが進んでいるのだろうとイメージしていました。
アライド:実際はどうでしたか?
船井:企業とあまり変わらないという印象でした。
アライド:卒論ではアンケート調査とサイト実証実験をされていますが、調査をする前と後で、こうではないかと思っていたのに違っていたとか、あるいは思っていた通りだったといったことはありましたか。
船井:地方自治体のサイトというのは信用度が高いと思っていたのですが、窓口と広報紙とウェブとを比べると、ウェブの信用度が一番低く、身近に感じていないという点に非常に驚きました。
アライド:自治体サイトが身近に感じられない理由は何だと思いますか。
船井:地方自治体のサイトを利用している人に聞くと、図書館情報やスポーツ、イベントを見ているようです。利用していない人に聞くと、知りたい情報がなかったり、他の方法で調べることができたり、利用するものがなかったり、難しい言葉が出てきて調べられないといった理由があがりました。
大事な言葉は繰り返し伝えることが大事
アライド:私たちも自治体の方にできるだけ専門的な言葉は使わない方がいいですよ、という話をしているのですが、難しい言葉が出てくるというのは金城先生のご研究の観点ではいかがでしょうか。
金城:「アクセシビリティ」も難しい言葉の一つだと思うのですが、例えばお茶のCMを何回も繰り返し見ているとおいしいと思えるように、何度も触れているとそれが当たり前という感覚が生まれます。ですから、本当に大事な難しい言葉は中身を変えることなくそのままストレートに伝えていった方がいいと思います。解説は必要ですが、単語としてウェブアクセシビリティというのは浸透していったほうがいいと思うなら、何度も使って肌で触れてもらう機会を作っていくといいと思います。
アライド:例えばアクセシビリティという言葉に象徴されるように、自治体として伝えなければならない言葉があるとすれば、何度も何度もそのまま伝えていくことも大事だということですね。
金城:言葉として浸透していった時に、例えばキーワードで検索した時に違う言葉を使っていると本当に必要な情報が取得できないこともあると思います。
アライド:先生がおっしゃったお話というのはまさにコンテンツそのもののアクセシビリティも重要だということですね。
難しい言葉でも、置き換えない方がいい言葉もあるという金城先生のお話は、新鮮な感じがしました。認知心理学や高齢者の記憶のお話はとても興味深く、別の機会にまた詳しいお話をうかがってみたいと思います。
次回は、船井さんの卒業論文について詳しくお話をうかがいます。学生さんへのアンケートや、自治体サイトを実際にユーザーに操作してもらうサイト実証実験を通じて明らかになった自治体サイトの問題点とはどのようなものだったのでしょうか。ご期待下さい。