大妻女子大学 金城ゼミインタビュー
第3回:大学生から地方自治体ウェブサイトへの3つの提言
[ 2009年4月6日 ]
アクセシビリティの研究を通じて
アライド:金城先生が船井さんの卒論をご覧になられたご感想はいかがでしたか。
金城:私も彼女の研究を通して学ばせてもらいました。私のアクセシビリティの捉え方も少し表面的だった部分があるかなという気がしました。目の見えない方が工夫されて、自分専用の利用環境で情報を取得されているというところまで想像が及んでいなかったのです。アクセシビリティというのは奥が深くて、チェッカーで検証すればいいというものではなく、実際に使われている方の様子を見ない限りは論じられないな、と思いました。
アライド:いい評価をされているということですね。
金城:厳しいことを言うと、アンケートと実証実験と2つのことを欲張ってやったのですが、本当はもう少しそれらを統合させられる時間があればよかったと思います。少しばらばらになってしまったところがありました。例えば心理実験なら何人もの方に同じことをやってもらって、個人ではなく、これが全体的な傾向だというところまで持っていかなければならないので、そういうところまでできるとより良かったという気がします。
アライド:時間的な制約があったり、被験者をみつけたりするのは難しかったと思いますが、船井さんが本当はこの辺までやりたかったなという事はありますか。
船井:先生がおっしゃったようにアンケートに時間がとられてしまい、ビデオ実験をもっと頑張ればよかったな、と思います。
アライド:ゼミの後輩の方で、同じようなテーマで卒論に挑戦される方はいらっしゃいますか。
金城:2年前からアクセシビリティをゼミで取り上げたところ、人気があるテーマのようで、地方自治体に絞ったのは船井さんが初めてなのですが、他にも卒論の題材にした学生がいます。彼女と同じ学年で私のホームページを作ってくれた学生がいて、チェッカーを使っていかにウェブアクセシビリティを高めるか工夫した点を卒論にまとめました。また、去年旅行会社に就職した学生がいたのですが、旅行会社と政府観光局のサイトのアクセシビリティを卒論の研究テーマとしました。興味のある学生はたくさんいると思います。
アライド:船井さんから、後輩の方にこういうことをやってみてほしいというご意見はありますか。
船井:ビデオ実験をもっとやってくれる人が現れたらうれしいです。高齢者や若い人ではサイトの使い勝手が違ってくると思います。例えば、検索機能を多く使う人やインデックスから見る人など、年齢別に傾向があらわれたら面白いと思うのでやってみて欲しいです。
アライド:卒業された後、ウェブアクセシビリティについてどのように関わっていきたいですか。
船井:例えば銀行だったら窓口に行かなくてもネット上で手続きを済ませたりできるなど、ウェブは色々な可能性があるので、情報弱者の人ほど一般の人よりも恩恵が大きいと思います。就職先の企業でウェブ関係の部署に行くことがあれば、情報弱者の人が恩恵を受けられるような取り組みをしていきたいと思います。
アライド:船井さんに続く方が継続して出てきてくださると嬉しいです。船井さんからは、私たちがセミナーやお客様のところで普段お話している重要なポイントを、たくさん指摘していただきました。セミナーに数回出たぐらいでは、なかなかここまで深く理解することはできないでしょう。やはり、自分でアンケートや実証実験をしながら、何のためにアクセシビリティが必要かをよく考えられたからこそ、言葉に説得力があるのだと思います。正直言って講演していただいてもいいくらいです。
また、「認知心理学」というと一見ハードルが高そうですが、実際に金城先生にわかりやすくお話しいただくと、高齢社会の中で一般の社会人が知っておいた方が良さそうなことがたくさん出てくることが分かりました。金城先生には、是非また別の機会に詳しくお話をうかがいたいと思います。
金城先生、船井さん、貴重なお話をどうもありがとうございました。