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情報アーキテクチャ入門
第2回「情報アーキテクチャって?」

[ 2005年8月1日 ]

執筆担当
安部大雅
(あべ たいが)



今回は、第2回ということで、前回のまとめのうち、

  • 「情報アーキテクチャとは、秩序を与える事である。」
  • 「ウェブサイトの情報アーキテクチャが整理されると、どこにいて次に何ができるのかが分かる。」

の2点についてより詳しい議論をし、情報アーキテクチャ背景と展望とをご紹介します。

はじめに 秩序を与えること

情報アーキテクチャを語る上で、外せない人物として、R.S.Wurmanがいます。彼は、カリフォルニアのイエローページ(電話帳)の編集やTED(technology,entertainment,Design)会議の副座長として高名なのですが、そもそも「情報アーキテクト」という肩書きは、建築、教育、コンサルタント、執筆活動という多岐にわたる彼自身の活動を名付けるために、「理解、インストラクション、学習」のプロという意味を込めて作られました。開祖とも言うべきWurman自身が、ペンシルバニア大学建築学科を卒業しているように、情報アーキテクチャは建築と深い関係に有ります。

現代建築の巨人ミース・ファン・デル・ローエは建築家に対しての講演会でこのように語っています。

「われわれは秩序を持たねばならない。秩序とは、それぞれのものをそれに適した所に置き、それぞれのものに、その性質に応じた役目を与えることである」

もうひとり、ミースと並び立つ巨匠ル・コルビュジェもこのように語っています。

「建築する、それは秩序づけることなのである。何を?すなわち諸々の機能ならびに物体を秩序づけること」

と。

建築家が、バラバラのレンガや木材を組み立てて建築物にするように、バラバラになっている情報をくみ上げて我々にとって有用なものとすること。それが、情報アーキテクチャだといえるでしょう。

建築家の扱う、レンガ、柱、くぎなどの具体的なものに比べ、情報アーキテクトが扱う「情報」は、抽象的なものなのです。情報を定義づけることは、非常に困難な作業なのですが、G.ベイトソンは、「情報」を「違いを生む違い」であると定義づけています。

マスメディアや身の回りに情報が溢れ出した時代を敏感に感じ取ったWurmanは、この氾濫する情報に対して秩序を与えることこそ、彼自身の仕事であると考え、「情報アーキテクト」と言う言葉を作り出したのでしょう。

そして、このような秩序付けは誰もが無意識にしろ、意識的にしろ行っていることなのですが、前回も述べたように、インターネットという画期的な情報技術が情報の秩序付けをこれまで以上に我々に強いていると言えるかもしれません。

それでは、どのような秩序付けを行えばよいのでしょうか?

サイバー空間の身体性

突然ですが、鳥類の一部が4原色で世界を見ていることをご存知でしょうか?人間の場合は網膜上の光受容細胞(錐体細胞)が赤、青、緑の波長に対して反応するため、我々にとっての視覚空間は、そのように秩序づけられているのですが、鳥類の場合は全く違う視覚空間を持っていると考えられます。(昆虫などの視覚も人間と全く違うはずです。)これは、花の蜜を吸う鳥が、花の色を識別できるように、そのように進化してきたと考えられています。

このように、われわれは進化の歴史を引きずって空間を認識しており、そのような認識の中で行動するような生物であると言えます。また、花と鳥との関係性で分かるように行動と認知との間の密接な関係性が生物にとっても大きな要素であるのは言うまでもありません。

近頃、認知の理論として有名になった「アフォーダンス」も、このような、認知と行動との絡まり合いを理論的に扱うための枠組みとして考えることができるでしょう。
例えば、人間の手の大きさでつかめるような形をデザインすることによって、その物体を前にした人間に「掴むということ」を情報として提供する(アフォードする)ことをデザインできます。

インターネットのようなメディア空間は印刷媒体も含めれば、この500年ほどで現れたもので、人間の認知に進化的に影響を与えるほどの歴史は有りません。そこで、メディア空間を設計する時には、人間が既に持っている認知的なバイアス、子供の時から育ってきて慣れ親しんできたルール(取手は引っ張るものであるなど)を活用し、人間とメディア空間との自然なインターフェースを作ることを意識しなければなりません。(註1)

たとえば、クリックをする場合には、影がついて立体的なものにすることによって、人間がそこを押すことができるという情報を自然に伝えたりすること、また、windowsやMacOSなどで採用しているインターフェースを積極的にブラウザでも活用することによって、ユーザが既に持っている知識に沿ったインターフェースを作ることができます。

メディア空間は、人為的なものであるため恣意的に作成することもできますが、その際にはユーザの側もなかなかその空間の秩序を類推することができないため、秩序を持ってメディア空間を作り上げることが求められます。ユーザが既に慣れ親しんでいる秩序や人間の認知的な性質を利用して、メディア空間に秩序を与えることが情報アーキテクトの仕事だと言うことができます。

現在のウェブサイトのルール

ウェブサイトの物理的な制約として、最低限意識すべき事柄に以下のようなものがあります。

  1. ハイパーテキストの性質(情報アーキテクチャ入門:第1回の解説へ)
    • (ア) HTMLは、ページ記述言語であってサイト記述言語ではない
    • (イ) 「サイト」という単位を意識的に提示する必要がある
  2. ユーザが可能な行動
    • (ア) クリック(リンクの選択) : 例えば、マウスでクリックする際にクリックできる所とできない所の区別、リンク先の予測
    • (イ) テキスト入力: 語句の入力、google suggestの例

上記のような要素を組み合わせて実現しているナビゲーションとして(株)コンセントの長谷川氏が7つのナビゲーションを提唱しています。(註2)

ストラクチャ型ナビゲーション
サイトの構造を表すもの
パン屑ナビゲーション
ページが属する階層を追ったナビゲーション
機能ナビゲーション
コピーライト、サイトマップなど、基本機能へのリンク
目的別ナビゲーション
ユーザーの目的ごとに整理されたリンク
リファレンス型ナビゲーション
コンテンツ間の相互参照のためのリンク
ステップナビゲーション
ページを移動するためのナビゲーション、全体の中での現在位置表現
ダイレクトナビゲーション
検索機能

それぞれが、上記の要素のどのような組み合わせなのかは宿題としましょう。もちろん、上記のような既に慣れ親しんでいるインターフェースを活用してサイトをデザインすることは非常に重要ですが、新しいインターフェースを実現する場合は、人間の性質や既存のインターフェースの隠喩を活用することが重要です。例えば、WindowsやMacOSでの「デスクトップ」という隠喩は、非常に良く考えられたものですが、それらの次世代OS(Tiger、Longhorn)で検索が重要となっている現在では、別の隠喩が必要なのかもしれません。

編集の技術

今回は要素への理解を中心に解説しましたが、映画や小説などのように、要素をどのように組み合わせればユーザの興味を引き、楽しいメディアが作れるかという点も非常に重要です。
特に、映画に親しんだ我々は、編集された時間の流れを理解することができますし、単に一方向に進む時間を組み合わせただけでは退屈に感じてしまうかもしれません。情報アーキテクトが一番の創造性を発揮できるのがこの点なのかもしれません。ここでは、この点が今後の我々情報アーキテクトの課題であることのみ指摘して、文末に参考図書をあげておきます。

まとめ

  • 情報アーキテクチャとは、秩序を与えることである
  • 身体性をうまく利用して秩序を与えよう
  • 現在のウェブにもある程度の秩序はある。それをうまく利用しよう
  • その他のメディアのルールも参照するとよい
註1:人間とメディア空間との自然なインターフェースについて
gunmojiで知られるRingo氏が、web空間へのゲームプログラマーの進出に関して、Ringo’s
weblogに同様の記事
を書いている。
註2:7つのナビゲーションについて
株式会社コンセント 長谷川敦士氏、2002年11月、ヒューマンインターフェイス学会講演資料「ウェブユーザビリティにおける情報アーキテクチャ」(http://www.concentinc.jp/ia/his02_hase_021115.pdf)
視覚の参考サイト
岡部正隆・伊藤啓、『第1回 色覚の原理と色盲のメカニズム』、秀潤社「細胞工学」Vol.21
No.7, 2002年7月号「色覚の多様性と視覚バリアフリーなプレゼンテーション」
参考図書
G・ベイトソン「精神の生態学」佐藤良明訳 新思索社 ; ISBN: 4783511756
D・スペース 「ミース・ファン・デル・ローエ SD選書」平野 哲行 訳 鹿島出版会 ; ISBN: 4306052044
ル・コルビュジェ「モデュロール 1―建築および機械のすべてに利用し得る調和した尺度についての小論(1) 」吉阪 隆正訳 鹿島出版会
; ISBN: 4306051110
T・ネーゲル, 永井 均「コウモリであるということはどのようなことか」勁草書房 ; ISBN: 4326152222
J.J.ギブソン「生態学的視覚論―ヒトの知覚世界を探る」サイエンス社; ISBN: 4781903932
M・マクルーハン「メディア論―人間の拡張の諸相」みすず書房; ISBN: 4622018977
F・トリュフォー「定本 映画術―ヒッチコック・トリュフォー」晶文社; ISBN: 4794958188

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