大妻女子大学 金城ゼミインタビュー
第2回:大学生が指摘する地方自治体サイトの問題点とは
[ 2009年3月30日 ]
想定していなかった問題点とは
アライド:実証実験で、想定していた結果と違っていたものがあれば教えてください。
船井:自治体のサイト内に検索機能がありますが、それは利用しやすいと思っていたのに違いました。例えば乳幼児医療費助成という制度がありますが、「乳幼児医療費助成」という単語で検索すると情報が出てくるのですが、「乳幼児医療費助成について」など、単語に続く言葉を入れてしまうと情報が出てきませんでした。また、「乳幼児医療費助成」でヒットはしたものの、最初に出てくるのが乳幼児医療費助成について話したという内容の市議会の議事録でした。手続きや申請の内容など本当に欲しい情報は6件位下の方に出ていて見つけるのに時間がかり、サイト内に情報があるのになかなかたどり着けないということがありました。
アライド:それは私たちが自治体サイトのコンサルティングをしている中で出てくる象徴的な問題の1つです。ユーザーが本当に必要な情報になかなかたどり着けない、ということに自治体の人が気付いていないのです。
船井:情報は結局見つかったものの、詳しい内容は電話で問い合わせが必要というものもありました。
アライド:情報が特定できても、問い合わせ先に聞いてくれということになっていたのでは不満が残りますね。そういうパターンは多いです。船井さんだったらどうしたらいいと思いますか。
船井:議事録よりも、一般市民が調べたい手続きとか利用方法などの情報を検索結果の上に出して欲しいです。
アライド:サイト内検索ではなく、トップページのメニューからは探してみましたか。
船井:「出産・育児」というメニューからたどったページに載っていたのですが、詳しい情報が載っていなくて、もしかしたら他にあるのかもしれないとサイト内検索を使ったのですが、結局同じ結果だったということです。
アライド:これもありがちな問題ですね。
アライド:今回4名の方に実験をしていただいて、こういう方だとこれが使い勝手がいいけれど、こちらの方は使い勝手が悪いなど、被験者による違いに気付かれたことはありますか。
船井:違いはあまり出てこなかったのですが、ユーザーに共通して面白いなと思った点があります。分野別や人生の出来事によって整理されているメニューはどのユーザーも使いやすいということでしたが、自分があると思っていたメニューのところに情報がないと、アレッと思ってしまうようです。例えば、市内の火災情報というのが防災情報のカテゴリーの中にはなく、どこにあるかと思ったらトップページの災害情報にあったりしました。
アライド:先ほどの検索結果のように、あると思っていたところにない、ということですね。
船井:あってもトップページの下の方にあったため、気がつかなかったのです。
アライド:スクロールしないでも見える範囲に必要なものは載せて欲しいですね。まさに私たちが日頃、自治体の方にお話ししていることです。
高齢者ユーザーの操作を見て
アライド:高齢者ユーザーの方がサイトを使っている様子を観察していてどのような感じがしましたか。
船井:画面にある情報を全部読んで、それからクリックする傾向があるなと思いました。
アライド:スクロールはいかがでしたか。
船井:スクロールが必要なこと自体、気が付いていなかったりすることがありました。まさか画面の下の方にも情報があるとは思っていないのです。
アライド:金城先生がご専門の認知心理学に関係するお話ですね。
金城:高齢者の記憶の研究をしていますが、高齢者は若い人に比べて反応が遅かったり情報を取るスピードが遅かったり、知っていることに固執してしまう、知らないことがなかなか覚えられないといったことがあります。ぜひそういうところを私ももっと研究してみたいと思っています。
船井さんから、自治体の方が日常業務の中でなかなか気づくことができない重要な点をたくさん指摘していただきました。第3回は、地方自治体のウェブサイトの在り方についての3つの提言を中心に、お話をうかがいます。ご期待下さい。